昔日の譚詩曲 (バラード)













          1ヶ月間降り続けていた雨がようやく上がった。
            雲の切れ間から控えめに陽が差し込む。
            隼人はトレーラーハウスから出て空を見上げた。
            頼りない光を圧するかのような影。
            廃墟となった早乙女研究所。

                散り去った命の     墓標。








 3週間前、竜馬が出て行った。
 苦渋に満ちた顔。いつだって溌剌と、生気と自信に満ちた奴だったのに。
 引き止めることは考えなかった。もともと、研究所を出ると言っていた。
  

   「やめておけ。ゲッター線はお前の手に負えねぇ。」
   「ゲッター線のことについて、なんにもわかっちゃいねぇ。」
   「こんなものに生かされているとは思えねぇ。運命に逆らうのも運命だ。」


 戦士として、ゲッターの力を誰よりも認め、信じていた竜馬。それが何故か不信を募らせていた。
 弁慶の事故が原因ではない。その少し前、真ゲッターのパワーテストの最終段階で竜馬だけが宇宙に飛び出したとき。ゲッターの制御が効かなくなり、一瞬、竜馬の心臓が止まった。すぐさま電気ショックを与え、心臓が動き出したと同時にゲッターの制御も戻った。実験を中断して地球に戻った竜馬は蒼ざめた顔をしていた。体調のせいか、まさか恐怖ではないだろう。竜馬はそんな、ヤワじゃない。その沈黙に何があったのか訝しんだが、日々はそのまま過ぎた。そして俺がゲッター線を使用しない戦闘ロボットの開発に取り組み始めても、何も言わなかった。以前なら、ゲッター線が最強なのだから、そんなチンケなロボットなんか必要ねぇだろ、の一言ぐらいあっただろうに。

 隼人が最強のエネルギーであるゲッター線を使わないロボットの製作を考えたのには理由がある。敵がいなくなったから、ではない。たしかに恐竜帝国も百鬼帝国も倒したと思っていたが、つい最近、宇宙の彼方に葬り去ったはずの百鬼帝国・大帝ブライが、自身の体を要塞と化して襲ってきた。宇宙のどこかに、瞬く間にブライを改造しうる科学力を持つモノがいたらしい。
 初代ゲッターロボも、ゲッターロボGも、到底歯が立たなかった。だが、研究所には真ゲッターロボがあった。搭乗している竜馬達自身ですら、信じられないほどの力だった。ブライの記憶にはゲッターロボGまでしかなかったのだから、真ゲッターの前には無力だった。ブライは叫んだ。
     「ゲッターは、核以上の悲劇になるぞ!!」


 負け犬の遠吠え、と言えば言えた。それに竜馬もそのときは、素直に真ゲッターの力を喜んだはずだった。ゲッターは、人類の味方だ。
 だが、どうしても気になった。
 人類がゲッター線を手に入れたのではなく、ゲッター線が人類を選んだのではないかと。
 選ばれたのならそれもいい。ただし、あくまでもお互いの利益の一致、共存、共生の相手としてならば。そうではなく、単に手足として人類を選んだのであれば、いつか人類は切り捨てられるかもしれない。恐竜帝国のように。
 だいぶ前に早乙女博士が話していた。ハチュウ人類はゲッター線に追われ地底に潜ったけれど、本当はハチュウ人類もまた、ゲッター線によって進化した種族かもしれないと。
 大型恐竜の闊歩する白亜紀の前のジュラ紀。そのときにも宇宙から格段の量のゲッター線が降り注いだようだ。そのとき地球における優良種は爬虫類だった。爬虫類はそのエネルギーによって、ある種族は大型化し恐竜となり、またある種族は体は小さいが脳の発達したハチュウ人となったのではないか。そしてふたつの種は共生していたが、白亜紀末、更に大量のゲッター線が降り注いだ。恐竜とハチュウ人類の許容を超えた照射量。恐竜は死に絶え、かろうじて生き延びたハチュウ人もまた地底に逃れた。降り注ぐゲッター線は地球の自然形態さえも狂わせ、氷河期を迎えた。それまで繁栄していた多くの種は死に絶えた。そしてやがて、新たな「種」が台頭したのだ。それらはより強力なゲッター線に耐えうる「種」だった。そして時は流れ--------------
 人類が地球を制覇した。
 ゲッター線を利用することを得た種族。
 本当に?
 人類は利用したのか?それとも利用されたのか。
 


 弁慶を取り込んだまま地下に沈んだ真ドラゴン。救出に向かった隼人と竜馬が見た映像。
 何時の時間、何処の次元なのだろうか。宇宙を覆い尽くすゲッター船団。ただただ敵を押し潰す破壊神。
 過去のことか、あるいは未来のことなのか、確たることは何もわからず。ただ、押し潰される敵の断末魔の叫びを聞いていた。
 そして一瞬で地上に押し戻されたとき、竜馬は言った。
    「俺はゲッターを下りる。」


 隼人は見たいと思った。
    「見てみたい。ゲッターが何処から来て、何処へ行くのか。」
 宇宙を覆うほどの船団。どれほど科学が発達して世界であっても、あそこまでの規模の船団は100年単位で編成されるものではない。どれほどの時間をかけて戦っているのだろうか。
 そこでふと、ひとつの考えが頭を過ぎった。
 あれは人類の遠い未来の映像で、ゲッター線は人類を戦士として駆り立てているのではないだろうか。人類がゲッター線に忠実に、ロボットのように。
 馬鹿な事を、と思いながらも、その意識を降り払うことが出来なかった。ゲッター線はそれ程までも大きい。
 隼人は新しいエネルギーに目を向けた。ゲッター線に対抗するのではない。おそらく、ゲッター線を越えるエネルギーを、人類が手に入れることは無いだろう。だから数値は大きく下がろうとも、ゲッター線の特性を持つエネルギーを開発しようと。
 ゲッター線の特性---------高エネルギーと金属変化を促す-------
 プラズマボムス。
 ゲッター線ほどの高エネルギーではないが、それでも現時点の地球のエネルギーとしては飛び抜けている。このエネルギーでゲッターロボのような可変化性の合体戦闘ロボットを作ることが出来るならば。
 人類はその才に合った未来を創り上げることが出来るのではないだろうか。
 隼人個人としては、宇宙の最果てへ、ゲッターの終着を見てみたい気は強いが、そこに人類を引っ張っていくのが良いことだとは到底思えない。
 ゲッター線研究は確かに必要だ。これまでに失った命と願いのためにも、続けられるべきだろう。早乙女博士は憑かれたようにゲッター線研究に没頭している。所長としての職務はすでに放棄している。博士はそれでいい。俺は。
 隼人は所長代理として様々な仕事をこなしながら、ゲッター線を使わぬロボットの開発に取り組んだ。試作品が完成したその時。

           何かに反応したかのようにゲッター線が暴走し。




      研究所は崩壊した。
 
 






 隼人はゆるく頭を振ると、瓦礫の上に腰を降ろした。



 あのときのことは、いまだに何がどうなったのかわからない。
 早乙女博士に言われ、リョウと共に真ゲッターに乗り込んだ。ゲッターを降りると言っていたリョウさえもが必然のように乗り込んだ。不思議と言えば、武蔵の影を見たこともだ。あれは、霊体とでもいうのだろうか、それとも単に、幻か。
 とにかく時間稼ぎといわれても何を為すこともできず、ただがむしゃらに突っ込んだ。そして異次元を見た。
 見ただけだ。
 そしてすぐさま弾かれて、現実の世界に戻ったと思ったが。


      研究所は崩壊し、誰一人、生存者はなかった。
      博士やミチル、元気や全所員が。
      消えていた。
      これまでずっと守ってきたはずの命が。
      呆気なく消えていた、骨さえも残らず。


  隼人は研究所を封鎖した。


 研究所内のゲッター線の数値は、通常の値をはるかに超えていた。いくらゲッター線が人体に無害だと言っても、これほどの値は想定してはいなかった。これは、真ゲッターにエネルギーを注入するときの値だ。
 隼人は政府への対応、近隣環境の異常の有無、そして死んでしまった280名もの所員の遺族への応対、説明と保障に明け暮れた。
 ただ一人で。
 すべてをこなした。
 誰もいない。
 膨大な事務処理は、実際、隼人にとってはたいしたことではない。
 だからリョウが去っていったことに対して不満はなかった。いや、むしろ良いことだと思った。ゲッターと離れたことで、少なくともリョウの命の危険はどこにも無くなった。ゲッター以外でリョウを死なせることの出来るものなどない。武器でも病気でも。
 リョウの命だけは守られた。

 
 「さて、これから何をするかな。」
 おそらく敵を倒すことは出来たのだろう。仕留めた実感はないが、時空を越えて襲ってきた敵は、早乙女研究所が倒したのだろう。いや、ゲッター線エネルギーがか?
 ゲッター線研究は封印することが検討されているが、それがいいのかもしれない。敵を倒すためにゲッター線が必要、というより、ゲッター線があるから敵が襲ってくるような気がする。では、プラズマボムスの研究をするか?
 だが、プラズマボムスの研究は橘博士が取り組んでいる。ロボット開発するのでなければ、橘博士に任せておけばいい。
 考えながら苦笑する。
 そういえば、ここ数年、俺はずっと仕事に取り組んでいた。ゲッターのパイロットとして引っ張り込まれてからずっと、パイロットとして、助手として、研究者として、所長代理として。目の前に仕事がなかったことはない。なにをするか考えるなど、5年ぶりか?それ以前はどうしていたのだったか。退屈な日々を過ごすために。
  ああ、そうだ。俺が考えていたんじゃない。アイツがいろいろ考えていたんだ。





         神 竜二
----------   俺のいとこ。




                        





 竜二が隼人に会ったのは2歳のときだ。隼人はアメリカで暮らしていたが、両親を事故で失い、父親の兄である竜二の家に引き取られたのだ。
 同い年の二人は、親たちが心配していたよりもずっと打ち解けた。兄弟のように。
 アメリカで手広く事業を展開していた隼人の両親は忙しく、隼人はベビーシッターによって育てられたと聞いていた。竜二の父も仕事が忙しく、子供たちと食事を取るのは稀だったが、竜二の母は二人を分け隔てなく慈しんだ。
 隼人は口数の少ない大人しい子供だったし、竜二はそんな隼人に随分懐いていて、一日中一緒に居たが、決して喧嘩することはなかった。竜二に手がかからなくなった母親は、それまで断っていた夫婦同伴の接待に頻繁に出席するようになった。「隼人ちゃんがいれば、竜二はいい子でいるから安心だわ。」と笑って。
 竜二の父親は亡くなった弟、隼人の父親から以前に聞かされていた。隼人の知能が異常に高いらしいと。まだ1才にも満たないときで、計測することは出来ないが、特殊な機関から誘いを受けていると言っていた。今後どうなるか、成長すればただの人、ということもあるが、優秀な人間が竜二の側にいるのはいいことだと思った。もし、それで竜二が劣等感を苛むことになるなら、そのときは隼人が望む機関に行けば良い。そこで思う存分能力を伸ばせばいいのだ。お互いにとって、一番良いことを探そう。
 理解ある両親や後見人に見守られ、竜二と隼人は伸び伸びと暮らした。恵まれた日々。

 3歳になると、隼人の能力の特異性を誰もが知った。2歳までしか耳にしなかったはずの英語を綺麗に発音し、文章さえ書けた。もちろん、日本語は小学校で習う漢字すべて読み書きできた。計算もしかり。知能指数は、少なく見積もっても200は越えているだろう。
 教育機関や研究機関は狂喜した。隼人を是非とも研究室へ入れるようにと、竜二の両親に迫った。
 竜二が大泣きした。
 隼人の体にしがみ付き、それこそヒキツケを起こしそうなほど。両親は途方にくれた。勧誘に来ていた黒服の男達は、「隼人君のためなのだから。」と、竜二を引き剥がそうとした。そのとき。
 「何が自分のためかは自分で決める。」
 およそ3歳児とは思えない凛とした声で隼人が言った。
 「心配しなくていい。今は竜二といるよ。」
 涙でグシャグシャになった顔で見上げる竜二に、隼人はふわっと笑った。
 竜二は凍りついた。
 「よかったわね、竜二。」と笑いかけてくる母親に返事もせずに、竜二は隼人の言葉に怯えた。
   『今は、竜二と居る。』
 じゃあ、いつか?
 いつか、隼人は自分を離れていくのだろうか。
 かしこい隼人。やさしい隼人。きれいな隼人。つよい隼人。その隼人が。
 いつか自分を置いて行ってしまうのだろうか。
 恐怖。

 竜二は幼いながら、隼人の特異性を理解していた。隼人は自分とも他とも違う。
 二人で公園に行く。そこには自分たちと同じ年の子供もいれば、もっと大きな子供たちもいる。大抵は年の近い子供たちと楽しく遊ぶのだが、子供たちの中にはいわゆる「いじめっ子」もいる。自分が満たされない分、弱い者、小さな者に難癖をつけ、憂さ晴らししようとする。
 隼人は幼い頃から整った顔立ちをしていた。日焼けを知らぬ白い肌。切れ長の黒曜石の瞳、漆黒の髪。子供服のモデルだといえば、誰もが納得するだろう。それに大勢の中に埋もれていてさえ目立つ、不思議な存在感があった。
 そのせいで隼人はよくからまれた。
 「おまえ、なまいきだぞ!!」
 突き飛ばされそうになったのも、2度や3度ではない。だが竜二はその乱暴な腕が、決して隼人には届かないことを知っていた。いつも相手は即座にうずくまるのだ。隼人の腕が、ほんの少し、ブレただけで。何があったのかわからないままに大泣きする相手。その仲間たちも、隼人に手をあげようとした瞬間、予期せぬ痛みに身をよじる。そして隼人が黙って一歩踏み出すと、泣き声すら飲み込んで逃げ出すのだ。竜二はわけがわからず隼人を見る。その横顔の眼差しの冷たさ。
 「竜二、どうしたの?」
 固まってしまった竜二に向けられる眼は、いつもどうりの穏やかなまなざしで。一瞬、竜二は夢をみたのかと思う。
 「あの、あのね。隼人はまほうがつかえるの?」
 「うん?」
 竜二の問いに、隼人はけげんそうに聞き返す。
 「だってなにもしていないのにあの子たち、きゅうにいたがってないたよ。」
 「ああ、そのことか。ちがうよ、ちゃんとじぶんの手でなぐったよ。」
 にっこり笑う。
 「えっ、でもボク、みえなかった・・・・・」
 「早くうごかしたからね。それに一発だけだったし。」
 「いっぱつであんなおおきな子がたおれちゃうの?」
 「人間にはね、急所っていう弱点がいくつかあるんだ。そこを打てば一発でもかなり効くんだよ。」
 打ち放った拳自体が強力な力を持っていた、とまでは言わない。それに隼人だってちゃんと手加減したのだ。相手は筋肉のない子供だ。腹を突き破るわけにはいかないからな、と、子供というより幼児の隼人は思う。
 「ふぅん。やっぱり隼人はすごいや!!」
 目をキラキラさせながら褒めたたえる竜二に、隼人は『ふふっ』と笑った。


 幼稚園は同じ所に通ったが、小学校に入るとき、再び勧誘が来た。知能指数300。研究機関が放っておくはずがない。すでに小学校はおろか、中学、高校の学力を越えていた。先回はまだ子供だったから遊びたかったのだろう。だが今は自分の才能を解っているはずだ。隼人にとって、義務教育など時間の無駄に過ぎない。この国の最高機関の研究室こそがふさわしい。本人も望んでいるはずだ。
 そう信じ込んで意気揚々と訪れた職員たちは、またしても隼人に拒絶された。いわく、「つまらない。」
 隼人にとって知識など、一度、目にすれば即座に記憶されるものだ。今から頭を百科事典にして何が楽しいのかと。小学校の授業も大学の授業もつまらないことに変りはない。実験や研究にしても、特に興味を引くものは無い。専門教育は、「おもしろいこと、やりたいこと」が出来てからでも充分間に合う。自分なら。
 子供らしさのカケラもなくそう言った。
 憮然として帰る職員たちの背を見ながら、竜二は思った。
 自分はどれほど頑張っても、隼人と肩を並べることはできない。隼人の才能は、ヒトの努力とは別次元のものだ。自分のありったけの力を差し出しても、隼人にとっては「無いよりまし」という程度だろう。だったら俺は、できるかぎり「面白そうなもの」を探して、隼人に試させてやろう。何でも出来る隼人にとっては、この世界は「つまらないもの」だ。そしてその「つまらないもの」の中から、わざわざ「面白いもの」を探し出す気はない。あるはずがないと思っているのか。だから俺が探し出して目の前に持って行ってやれば、少しは楽しむかもしれない。隼人にとっては時間つぶしにすぎなくても、一緒にいられるだろう。
 隼人は学問だけの頭でっかちではない。身体能力、運動能力さえもずば抜けている。そしてあの眼。
 敵に対したときの、一切を否定する底冷えの眼光。対して竜二に向けた穏やかな瞳。

 竜二はあまりにも早くから隼人に出会い、共に暮らしてしまったからだろう。
 自分が決して届かないその才能に、存在に。


       羨むより  妬むより  憧れるより  魅入られて

                 囚われた。






                            ☆





 魔王鬼となって散った竜二を思う。
 学生運動をやっていたときの集団は、隼人にとって友達や仲間という前に「部下」だった。当然のように。
 だが、竜二のことは。
 部下ではないが友達でもない。血のつながりがどこまで人を縛るのか知らないが、竜二は「いとこ」として、その存在は別だったのだ。
 もちろん、隼人には他にもいとこはいる。だがそれらは他人と等しい。隼人にとって、いとこは竜二ひとりだった。おそらく竜二にとっても。互いのベクトルは同じ方向を向いていても、想いの強さが竜二を追い詰めたのだろうか。


 今、隼人の側には誰も居ない。
 共に戦い、死ぬときは一緒だろうと思っていた武蔵も、弁慶も。
 竜馬も。
 
 自分は守ったのだろうか。それとも、これから先、守れといわれているのだろうか。投げ出してしまうには、あまりにも多くの生命が犠牲になった。
 厄介なことだ。人のために生きる気など、さらさらなかったのに。せいぜい、敵を倒すため、勝つために戦っていたはずなんだが。はっきり言って、ゲーム感覚だ。もうゲームオーバーだから辞めた、といってもおかしくはない自分だったんだがな。
 俺が早乙女博士に目を付けられたのは、学生テロリストとして目立ったからだ。そうすると、それを薦めた竜二、お前が今のこの状況を押し付けてくれたわけだ。この終わりのみえない戦いに。また何かが始まるかもしれない。俺はそれに巻き込まれるだろう。神 隼人の名は、国防リストの一ページ目に記されている。退屈している暇はないかもな。
 礼を言おうか?竜二。
 ああ、そうだったな、竜二。お前はひとりでは何もできないんじゃなかった。ひとりでは何もしたくなかったんだ。いつだって俺が目を向けるとそこに居た。お前のことは何もかもわかっていると思っていたが、お前が一番望んでいたことに気づかなかった。
  バカヤロウは、俺の方か。



         雲が去り、夕焼けに染まった空を、  隼人は見上げた。




              -----------*-------------*--------------*-----------



   ゑゐり様  15500番 リクエスト

             お題は    「 竜二  → 隼人 」
                      それと、先回の隼人ベタ褒めリクの不足分の「褒め」

   
   ・・・・・なんと申しましょうか、半分は「崩壊・・・・そして」の一部ですねえ・・・・
   すみません、リクエストを拝借してしまうかるらです。
   竜二は一般的に見れば、「秀才」とか「リーダー」とか呼ばれる実力の持ち主だと思います。
   なのに誰よりも、竜二自身が隼人に囚われて、自分の良さに気づかなかったんでしょうね。
   また違った次元で、竜二を書いてみたいです。そのときは、幸せになるといいなぁ・・・・(??)

                       (2007.12.17    かるら )