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青き星にて   8



フランス。パリの郊外。
瀟洒な館。
手入れの行き届いた中庭は、色とりどりのバラが咲き誇っている。
テラスのテーブルにはマイセンのティーセット。
ダージリンの澄んだ色とさわやかな香り。

「日本に戻っていたのなら、連絡ぐらいしてくれてもいいだろう。」
少し拗ねた響きに口元が緩む。
「ごめんなさい。貴方を驚かせようと思って。」
「充分驚いただろうさ、あいつらは。」
苦々しげに呟く。
「わざわざ研究所に行くなんて。」
「でも、貴方がお世話になっているんですもの。姉としてはご挨拶くらい。」
「俺があいつらの世話をしてるんだ!」
ムキになって言う弟がかわいい。くすくす笑ってしまう。
「なんだよ、姉さん。」
ふてくされたように、ムッとする。こんなに感情を出す子だったかしら、と明日香は嬉しく思う。
いつも世の中に無関心だった弟。人との付き合いにも淡泊だった。それなのに。
ゲッターロボのパイロットとして早乙女研究所に入ってから彼は変わった。なんというか・・・・「人」になった?
それまででも別に、人を突き放していたわけではない。弟には人を引き付ける力があったから、周りには常に人がいた。だが人に取り囲まれながら、弟はいつも一人だった。他を支えても、他に支えられることはなかった。明日香は弟の並み外れた才能は誰よりも知っていた。そしてまた弟の、無欲に等しい無関心も。
だからこそ、早乙女研究所を訪ねたのだ。弟を変えてくれた「仲間」に会いたくて。
「ミチルさんって素敵な方ね。」
「え?ああ。」 
「うふふ。」
「姉さん?」
「ミチルさん、もしかして貴方に気があるんじゃないかしら。」
「は?」
「あら、貴方の間抜け面なんて初めて見るわ!」 心底びっくりする。
「な!間抜け面って!?」
「『気がある』ほうは訂正しないの?」
「・・・・ふぅ---.姉さん、よほど今日は暇らしいな。」
「いやぁね。貴方でも照れることってあるのね。」
「どこが照れてるって!第一、ミチルさんに失礼だ。彼女は俺達4人に平等だ。」
「そうかしら・・・・・・私を姉だとは知らなくて、ヤキモチ焼いたように見えたけど。」
「見間違いだろう。」
「・・・・・・私の勘は当たるのだけど。」
 隼人は黙って紅茶を口にする。パリの学会の後はいつも此処に来る。父の会社は姉が引き継いでいるが、経営や研究等で力を貸している。今回訪れてみると明日香は日本に帰国しており、早乙女研究所に挨拶に行ったという。子供じゃあるまいにと不機嫌だったが仕方がない。明日香が戻るまで義兄と会社の仕事を片付けていた。
「・・・・・・姉さん、今夜の夜会、出席するよ。」
「まぁ、本当に?珍しいわね。でも助かるわ。貴方を紹介してほしいって方が大勢いるのよ。」
「パートナーは姉さんに頼む。・・・・・これからしばらく。」



まだ気持ちもなにもはっきりしないが・・・・・・・・・
少し動き出すのが良いように思う。
俺も、勘がいい方だ。





 

 ゲッター日記C お礼




 「リョウ、どうしたんだ?」
 オカルト体験より一夜明けて。
 やり残していた宿題がバレたムサシと元気は、リョウの監督の下、青息吐息だ。
 目を光らせているリョウの手首に包帯が。
 「ああ、これか。昨日は気付かなかったんだが、どうも捻ったらしい。」
 「だいぶ痛むのか?」
 「いや、左手だから文字を書くのに支障はない。茶碗を持つのはちょっとな。どうした、珍しく心配してくれるじゃないか。」
 ちょっと嬉しいリョウ。
 「いや、姉貴がな。せっかく今日も軽井沢のホテルに泊まるから、お前達も一緒に食事しないかと。」
 「え、ホテルで食事!?行く行く!!」
 「だめだ。お前はまだ宿題が残ってる!今日と明日しかないんだぞ!!」
 「ええ〜〜せっかく明日香さんが〜〜」
 「だめだ!俺も行きたいが、この手だからなぁ・・・・誘ってもらって嬉しいが、すまないな。」
 「気にするな。姉貴も急に思いついただけだ。」
 「でも、ホテルで食事なんかしたことないなあ。ハヤト、おまえはよくあるのか?」
 「姉貴に付き合うときはな。」
 そっけなく言うが、ハヤトが姉である明日香さんに弱いのは周知の事実だ。(笑) まぁ、こいつは見た目には信じられないが、いいとこ育ちのおぼっちゃまだ。笑えるけどw
 なんとなくほほえましい気持ちになったリョウだが。
 バタン。
 ドアが開いて、着飾ったミチルが、
 「ハヤト君、どうかしら、このワンピース。明日香さんに笑われないかしら!」
  季節を早取りしたエンジ色、初秋のワンピース。軽く羽おるボレロは燻し銀の色。
 愛らしいデザインにシックな色合い。
 「おわぁ!!」   真っ先に、
 「ミチルさん、とてもお似合いですよ!!いやぁ、なんていうか、凄くいい!!!」
 ムサシが褒める。一見やぼったいムサシ。もしかして、美的センスは一番!!!・・・・・・・かな?
 「ありがと、ムサシくん!!」
 にこにことこちらを見るミチル。
 そりゃ、こっちも負けられない。(クス)
 「よく似合ってるよ、ミチルさん。その色もいいね!」
 うん、さすが優等生のリョウ君。本人とドレスを褒める。遅れ取ったハヤト君。さて、どうする?
 「リョウもムサシも姉貴との食事は無理なようだ。悪いけど、ミチルさんだけでも来てくれないか、姉貴が残念がる。」
 おいおい、さっき、”思いつきだからほっとけ”みたいなこと、言いませんでした?
 「あら、そうなの?もちろん、ご一緒するわ。この服のお礼も言いたいし。」
 くるんと回ってみせる。あはは。
 「じゃあな、行って来る。」
 さっさと二人、部屋を出て行った。

 ムサシとリョウ。
        「あれ?」
 
 なんか、腑に落ちない二人だった。



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陽だまりの追憶  1




 「動くな!!ウィルソン!!」
 「あ?!」

 大声に足を止めると、目の前をヒュッと何かが奔(はし)っていく

 「カッ!」 
 『ガサッ』
 少し離れた木の根元に飛ばされたのは、首を小枝に貫かれたサンゴヘビだ。ほぼ同時に小石が当たる。
 「おっしゃ、無事だな!」
 「リョウ、弁慶!」
 ウィルソンが駆け寄る。
 「サンキュー!!感謝する!!」
 「いいってことよ!」
 ニカリと笑みを見せる二人。
 「や〜〜、凄い腕だな。」
 「というより、よく気がついたな!」
 皆、やんややんやと褒めたたえる。
 「さすがゲッターチームだ!」
 と言って、慌ててリョウ達の後ろを見る。隼人は相変わらずの無表情でバックパックを背負いなおすところだった。

 「怖いわ・・・・・・」
 ポツリとルイーズが呟く。
 「ああ?どうした、お前ほどのやつが蛇が怖いって、ずいぶん可愛いこと言うじゃないか。」
 「リョウの前だからって、ぶりっこしても無駄よ。」
 「違うわ、怖いのは隼人よ。」
 「へ?」
 「わたし、ちょうど3人の後ろにいたから見てたんだけど・・・・」
 ごくり。 
 「リョウは動くな!って言うと同時に木の枝を折って投げつけた。弁慶もすぐさま小石を拾って投げたの。隼人は、バックパックを降ろして血清と小型ナイフを取り出してたの。」
 「それって・・・・・」
 「や、その、準備万端というか、気がきくっていうか・・・・」
 「ううん。リョウが声を出す前よ。で、そのあと 『リョウ達がいると、カリキュラムのうち応急処置がこなせないな・・・…』って呟いてた・・・・」
 「「「・・・・・・・・・・」」」
 リーコンのメンバーは少し離れた所で会話しているゲッターチームを伺い見る。
 そのうちの一人がすっとこちらを見て。
          

     全員、蛇に睨まれたように硬直するのだった。


                ☆





 蒼き星にて   3

 

アムルタートは文字を知らなかった。
『聖者の星 イリン』では、後世に伝える何物もなかったから。
千年を超える寿命。その間に、飢えも寒さも病もない。
生きることに必要な知識もいらない。


アムルタートの種族の知性は高い。
かつての人々の記憶力は、1000年の日々を覚えていたという。
何の変化もない日々のあれこれを、忘れることはなかった。
忘れることが出来ず、記憶と同じ日々を、ただひたすら繰り返すだけ・・・・・・
怪我や痛み等の苦しみのない世界で、生きることだけが、苦痛だった。
絶対的な孤独から、救ってくれたのはゲッターチームだ。



 「隼人、私に何か仕事をちょうだい。教えてくれればなんでもやるわ。私はあなた達に救われた。私の命は貴方達のものよ。」
 夜半、いまだ中央指令室でデーターを見ている隼人にアムルは言った。
 「違うな。君の命は君のものだ。」
 データから目を上げて隼人は言った。
 「でも!私はここに居るべきではないのかもしれない。だからここにいてもいいという理由が欲しいの。」
 縋るような声のアムル。隼人は椅子ごと体を向けて。
 「俺達と君が会った。そして君は俺達と来た。理由なんてそれで十分だ。何かしたいのなら自分で見つければいい。焦ることはない。リョウたちと一緒に居れば、そのうち用事もできるだろう。俺達も異世界からここに来た。君とたいして変わりはない。いや、どちらかというと俺達は君に近いのかもしれないな。」

 
 ☆
 
 「アムル!なんか最近元気じゃねえか。」
 「そうだな、なんていうか明るくなったぜ。」
 「ありがとう、リョウ。武蔵。」
 ネオアースに来てからも淋しげだったアムルに笑みが浮かんでいる。
 「いいことでもあったのか?」
 弁慶もニコニコして尋ねた。暗いより明るいほうがいい。特に美人は。
 「ええ。隼人が、私と隼人は近いって言って。」
 ・・・・・・・・・・・
 それは褒め言葉なのだろうか、良いことなんだろうか。
 嬉しげなアムルになんと言っていいのか迷う3人。
 「・・・・・・・アムルはまだ言葉がよくわかんねえだろから・・・・」
 「あれじゃないか、ヒナが初めて見たやつに懐くって言う・・・・・」
 「今から訂正効くか?・・・・」
 「どう訂正するっていうんだよ。」
 「まあ、性格が似るってもんでもねえだろ・・・・」
 
     隼人は、「俺に」って言ったよね、アムルさん。

                     (2011.6.4)


 

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  セルリアン・ブルー




「ぐふっ!ぐふふ。げひひ!でへへ!!」
先ほどからずっと、武蔵の笑みが続いている。いいかげん。
「気色悪ぃんだよ!止めやがれ!!」
怒鳴ると同時にキックを食らわすが、ゴロゴロと転がっていく武蔵の顔は笑み崩れたままだ。
「いや〜〜リョウ、妬くな、妬くな。」
「妬いてねぇって!!」
何を言っても無駄だ。ミチルと「買い出し」という名のデートをした武蔵。ランチとケーキバイキングを楽しんで、もう、大満足だ。
「ミチルさん、赤のワンピースでファーの付いた白のコートでさ。もう、雪の女王様みたいで!!あんまりかわいいんで声かけてくる野郎もいて、おいら、きっちりエスコートしたんだ。そして・・・・」
延々と続く。帰宅してからずっと。一緒に帰宅するはずだった隼人は、ペンダントの包みをリョウに渡すと、今日は研究所に泊まるからと別れた。
仕事だと思い込んでいたけど。
もしや。

 
       逃げたな!


       (2009.12.14) 
 

 

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蠢く闇  0  



        馬鹿なことを、と呆れた。
        何を考えているんだ、と怒りを覚えた。
        そんな「モノ」が俺だと言うのかと、情けなさで腹が煮えた。
        そして。
          「そんなモノ」に縋らなければならないお前に、
     泣きたくなった。  

 意識を集中させる。ふとすれば宇宙空間に溶け込みかける意識をただ一点に集中させて、壊す。いくつもの核を壊す。クローンの製造を阻止するために。リョウが俺を諦めるように。だがリョウはますます頑なになり、押し殺していたはずの狂気がゾロリと動き出した。言葉を伝える術を持たない俺の前で蝕まれていくリョウ。ついにゲッター線を使い出した。俺は可能な限り処分する。だが、どうしても4つ、壊すことの出来ない核が残った・・・・・うまく成長してくれるなら・・・・・・それでもいいのかもしれない。リョウが壊れていくよりは。それもまたひとつの、現実というべきなのかもしれない。これだけ弄ったら、少なくとも見かけは俺には似ないだろう。クローンをクローンとして、俺とは別物として、共に過ごしていくのもいい。・・・・・壊れるよりは。 
 4つの核のうち2つは凶暴な怪物となった。だが、それらに襲われたリョウを救ったもうひとつのクローン。それは高い知能とリョウに対する敬愛の念さえ持っているように思えた。もう大丈夫か?俺が消えても。やっと逝けると思ったとき目覚めた、最後のクローン体。

     戦慄した。
     その禍々しい 笑みに。
    
                              (2009.3.31) 

 

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青き星にて  外伝



 早朝。
 木漏れ日がキラキラと、まるでさざ波のように揺れている。その光を受けながらそっと薔薇に触れているゴウの姿に、ケイは思わず立ち尽くした。ゴウの眼差しは穏やかで深くて、口元には懐かしむような、愛しむような、やわらかい微笑が浮かんでいた。
 「おはよう。早いな、ケイ。」  気配を感じてゴウが顔を上げる。
 「あ、うん、おはよう。ゴウこそ早いじゃない。昨日帰国したばかりで疲れてるでしょうに。」
 「ここは気持ちがいいからな。すっきりして、目も早く覚めるよ。」
 中性的な容姿だったゴウも、青年期に入り、整った精悍な顔つきになってきた。しかし着痩せするせいか、筋肉は綺麗に付いているのに、まだ華奢な感じがする。
 「その薔薇、ゴウに似合うね。」
 「似合うって・・・・・男にそれは変だろ?」  
 呆れたように言うが、その長い指先は、優しく薔薇に触れている。
 「その薔薇さ、『ゴウの薔薇』ってよぼうよ!」
 「え??何か変だろ、それって・・・・・・どうせなら『ケイの薔薇』にしよう。」
 「ううん、わたしは親父からこのペンダント貰っているもの。同じ真紅だから、お揃いにしよv。」
 ゴウにミチルのDNAの記憶があるから、とは言わない。ゴウはゴウだ。だけど。
 
    「だって、本当にゴウに似合うもの、その薔薇!!」

 


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「星追人達  小曲」



 「でも、よう。」
 早乙女家。リビング。
 『白い妖精』 『水の妖精』 『風のささやき』 『泉の精』。 竜馬には違いの解らない名のケーキを前にしてベンケイが言う。
 「う〜〜ん、流石だな、この味は妖精だ。」とか「ここがいいんだよな〜〜、ささやきと言って妙だ。」等と、リョウには理解しがたい批評を言いつつ、ほおばっている。
 「ゲッター線研究が政府から禁止されたって言ってもなぁ。ハヤトって、そんなこと気にする奴だったっけ?」
 不審を隠しもせず、ベンケイ。
 「オレもそう思うけどな。」とリョウ。記憶の中のハヤトは・・・・・・・
 「ハヤトさんは、『ゲッター線は確かに凄い力とは思うが、あんな気まぐれで扱いにくいエネルギーはオレは遠慮させてもらう。』、って。」
 「う〜〜ん。」とリョウ。 ミチルも不審気だ。
 「凄い力はわかるけど、気まぐれってどういう意味だ?」
 「さぁ。不安定って意味かしら。」
 「それはこれから先の研究課題なんだから、今から諦めなくてもいいんじゃないか?ハヤトらしくないな。」
 「まあ、新しいエネルギーなんてそうそう発見できるものじゃない。いずれゲッター線が必要になるだろうさ、宇宙に行くならな。」
 「そうよ。そのときはリョウ君もベンケイ君もよろしく頼むわね。」
 「「まかせてくれ。」」
 リョウとベンケイが声をそろえる。
 「そいうえば、敷島博士がハヤトの研究所に移るって?」
 「そうなのよ、急でお父様も驚いているわ。」
 「敷島博士はハヤトと気が合うからな・・・・・・・どんな宇宙船が出来ることやら。」
 
 「・・・・・・・・・・・・・・・・」




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「黒・平安京2」   







 「おい、この字、なんて読むんだ?」
 「あん?それよりこっちを見てくれよ。これでいくと、晴明って、味方になるんじゃねぇか?」
 「何やってるんだ。」

 「お、隼人、ちょうどいい。教えろ。」
 
 隼人が部屋を覗くと2人が本を広げている。珍しいことに字ばかりの本だ。(いつもはどんな本読んでるんだ?)
 「この本じゃ、頼光は大江山の酒呑童子とかいう鬼を倒したっていうぞ。それに晴明は鬼の親玉というより、帝のために鬼を退治してたって。」
 「やっぱ、あの世界はこっちとは全然違う世界だったのかな。俺たちが晴明をやっつけたのは、あっちの世界じゃなんの益にもならなかったのかな。」
 少し辛そうな竜馬。あちらの世界が心配、というより、頼光の死が無駄になったのではないかと気にしているのだろう。
 「どうだろうな。はっきりしたことはわからない。だが、ミチルさんが琵琶湖でいくつも鬼の頭蓋骨を発掘している。それは今まで見つからなかったものだ。あちらの世界とこっちが繋がっているとは言わないが、なんらかの影響は与えているだろう。」
 ほんの数日過ごした世界。竜馬は嫌いじゃなかった。鬼に噛まれ、自身も鬼になっていった頼光の部下の叫びを覚えている。俺も一緒に守ってやりたかった。指揮者である頼光を失い、あの軍団はまだ残っていた大勢の鬼たちを倒せただろうか。少しでも、頼光の願いは叶っただろうか。晴明は倒したけれど。
 「人は皆それぞれの世界で、それぞれに生きていくしかない。」
 冷たい言い様なのに、何故か竜馬は反発する気はしなかった。そう告げた隼人自身が、何故だか自分自身に言い聞かせているかのようだったから。
 「でもさ、きっとなんとかうまくやっていってるさ。俺のいた村では、それなりに皆な平和に暮らしてたぜ。鬼の存在は知ってたみたいだけど。」
 「兵士とかじゃなく、一番弱いはずの村人たちが、一番したたかなときもある。親玉を失った鬼たちは、いずれ淘汰されていっただろう。」
 弁慶と隼人の言葉に、竜馬もそう思うことにした。自分の手元にあるこちらの世界の歴史本。そこでは頼光は見事に鬼を成敗して凱旋した。この話についても色々な説話があるらしいが、とにかく、「めでたし、めでたし。」で終わったことにする。頼光の願いのために。

 でも、こっちでいくと、頼光って男なんだよな。う〜〜ん。

  
          

 
 
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『 前夜 ・UFO 』(?)風味   「 祝杯 」



 「敷島博士。」
 「ん?なんじゃ、早乙女。」
 早乙女研究所、地下研究棟。その最奥にある一室。
 「どうです、一杯やりませんか。いい酒を持ってきたんです。」
 にこにこと入ってきた早乙女。その両手には5本もの一升瓶。
 「おう、豪勢じゃな。」
 ドンと置かれた銘柄に、敷島は目を瞠らせる。
 「こりゃ、凄い。なにかあったのか?」
 胡乱気に問う。これほど機嫌のいい早乙女も珍しい。
 「実は、ミチルが隼人君と結婚するんですよ!」
 このうえなく嬉しそうに告げる。
 『ああ、なるほど。』
 と敷島は納得する。早乙女が、隼人を自分の後継者として切望していたのを知っていた。早乙女の生涯を賭けたゲッター線研究、宇宙開発。それを引き継ぐことの出来る者といえば。  神 隼人。
 その才能を、その真摯さを、早乙女は深く愛していた。
 「さっき、隼人君とミチルがワシの承諾を取りに来ましてな。」
 「ほほう。それはよかったのう。めでたい。」
 注がれた酒を一気に飲み干すと、敷島は早乙女のコップに酒を注ぐ。
 「隼人君は月面基地計画に招聘されていたので、気が気でありませんでしたよ。」
 「うん?なにか問題が?」
 「月面基地計画の総司令は、ランドウ博士なんです。」
 「・・・・・・・?・・・・・・」
 「ランドウ博士は、隼人君を非常に気に入っておりましてな。隼人君には勿論何度も言い寄っていましたし、ワシにも隼人君を譲ってくれと、しつこかったんですよ。」
 苦々しげに言う。
 「・・・・ランドウにも娘がおったか?」
 「いませんよ。ご自分の養子にしたがっていたんです。」
 「・・・・・・・・・・・まあ、飲め。祝杯じゃ。」
 不機嫌に吐き捨てる早乙女に、かける言葉も見つからず、とにかく酒を注ぐ。
 「おお、ありがとうございます。」
 とたん上機嫌な早乙女。
 「研究所の連中には言ったのか?」
 「いえ、今度武蔵君と弁慶君が帰ってきたら、皆の前で報告するそうです。さっさと言えばいいのに。」
 すこし、惜しそうな早乙女。嬉しくて嬉しくて堪らないのだろう。だから早速、敷島に報告に来たのだ。
 くっくっと笑って敷島は杯を傾ける。
 「おう、早乙女。今夜は飲み明かすとするかのぅ。」
 「ええ、敷島博士。お付き合い願いますよ!」


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  「前夜」風味、ちょこっとスパイスに「蠢く闇」
     
            (10.7)



  
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竜二 

          原作設定



<大きくなったら、何になる?>


        ぼくは じん りゅうじです。  ごさいです。
        らいねんは しょうがっこうへ はいります。
        ぼくは ひらがなは ぜんぶ かけます。
        すうじも ひゃくまで かぞえられます。
        おとうさんも おかあさんも ようちえんのせんせいも
        ほめてくれます。
        かけっこも とくいです。ようちえんで いちばんはやく
        はしれます。
        でも まだまだ たりません。
        もっと いっぱい べんきょうします。
        もっと いっぱい かけっこします。

        そして はやとと ずっといっしょに います。
        ぜったいです。




           -------*----------*----------*----------*----------

    他サイト様に触発されて、竜二です。
    絶対的な人間を身近にすると、妬むか、縛られるか、諦めるかです。
    可哀想だけど、竜二→隼人は好きなんです。竜二、ごめん! 






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青き星にて  1 未満





 「もう、うんざりよ!ほっといて!!」
 

 ヒステリックな声が廊下まで届いた。山咲とガイは顔を見合わせる。バン!と音がしてドアが閉められるとともにケイが飛び出してきた。
 「あっ!!」 
 ケイは驚いたように立ち止まるが、くるっと背を向けると駆け去っていく。ガイが閉じられたドアをそっと開けるとそこにはゴウが呆然と立ち尽くしていた。
 「お、おいゴウ。何があったんだ?」
 おそるおそる尋ねるガイに、ゴウは小さく呟いた。
 「ケイは、オレがいるのが嫌なんだろうな。」



 苦笑に見せながらその顔は、今にも泣きそうなものだった。



 あの戦いの終結から3ヶ月。
 世界はようやく復興に向けて機能し始めた。反乱軍と呼ばれていたスーパーロボット軍団は、世界政府と名を変えて、新たな世界の中枢となった。ゴウ、ケイ、ガイは、竜馬たちゲッターチームが時空の彼方へ去ってから、神隼人の副官だった山咲を後見として世界政府に日本支部に所属いていた。
 まだまだ物資は少なく、荒廃とした都市は再興にはほど遠い現状だったが、地球を取り巻く大気は浄化され、人々は13年にわたる長い地下生活から解き放たれていた。



 「ケイ。」
 基地のはずれ。
 膝を抱えて背を向けているケイに、山咲に声をかけた。
 「ゴウがしょげてたわよ。」
 ゆっくり腰を降ろす。
 「・・・・・・・・・」
 風が流れる。どこからか花の香りがする。日々の生活に追われ、はっきりと気づくことはなかったが・・・・大地は確かに癒されていた。 
 「ゴウが重いんだ・・・・・・・」
 ポツリとケイが呟く。
 「ゴウは二言目には『お前を守る』って。・・・・・・・・仕事だって私の分まで手伝おうとするし、食料だって少ないのに私に多く食べさせようとする。寝るとこだってベットは私に、ソファはガイに、自分は床に。順番にしようって言ったのに、『オレの体は平気だ。』って。・・・・・・・・体のことを言われたら何も返せないよ、言っちゃいけない気がして。」
 父・早乙女博士、姉・ミチル。2人の細胞から造られたクローン体。自分にとってゴウは一体なんなのか。
 ケイは苛立っている。
 「守るって。守るために生まれてきたんだってゴウは言う。じゃあ、私は?私は守られるために生まれてきたって言うの?」
 ギリッと唇を噛み締め山咲を睨む。
 ケイの空白の記憶。ただただ守られるだけだった弱い自分
愚かな存在。
 偶然ゲッターロボに関与してパイロットとして戦い、人類を、地球を守る一助になれたと思ったのに。
 正直ケイには父と姉の記憶はない。なんとなく覚えているような気もするが、思い出はない。それが苦しい。ゴウが「お前を守る」と言うたびに、2人を覚えていない自分を責めてしまう。与えられた無償の愛。受け取る資格のない自分。
 ゴウに八つ当たりしている自分が一番腹立たしい。

  「私、しばらくゴウと離れていたいな。」





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 拍手リクエスト。  號渓のお話。 悲観的なものでも良し、とのことで。
 拍手お礼は続かなくてもいいんですよね?続いたほうがよければ、拍手を!(ん?)