境界線









 流 竜馬が早乙女研究所に戻ってきた。
 車 弁慶と共に、新しいゲッターロボの開発に取り組んでいる。



 恐竜帝国ゴールとの決戦の時、光と共に蒼く変化した真ゲッター。「神ゲッター」と呼ばれたその姿は、戦いの後、あっさりと元の真ゲッターに戻った。
 再び沈黙した真ゲッター。
 日本政府が早乙女研究所の封鎖を解き、ゲッター線研究の再開を許可した条件が真ゲッターロボの封印だった。 
 巨大宇宙船と融合した帝王ゴール。人類の最強の切り札であったはずの真ゲッターロボでさえ、その想像を超えた破壊力の前では無力だった。そのゴールを倒したのは、真ゲッター自身が自ら進化した「神ゲッター」だった。そう、変化ではない、進化としかいいようのない。
 早乙女の設計図に記されていなかった形態。地球を破壊することさえ容易であろう力。
 たとえ號達の平和への想いが進化を促したのだとしても、起動キィすらわからないロボットを存在させることは恐怖でしかない。
 研究所の地下深くにゲッターは封印された。

 政府は早乙女研究所にゲッター線研究のみを許可した。軍事ロボットについてはネーサー基地にネオゲッターロボがある。人間の操作に忠実な。
 だが、世界の大国が競ってスーパーロボットの開発を競いだした。かつてランドウ博士の世界統一プロジェクトに賛同した各国は、自国の優秀な科学者や技術者、軍人を多く失った。今回の恐竜帝国の攻撃のときも手も足も出なかった。かろうじてアメリカ軍のテキサスマックだけが戦えただけで。
 日本だけが、最高・最強の力を持っていた。
 各国の首脳が抱いた不安と恐怖。
 かつてのニューヨークの惨劇のときは、日本もゲッターロボを失い、他に力はなかった。各国も日本に対し、ゲッターロボを封印するよう強気に出れた。
 だが今、日本は最強の軍事国家だといえる。ひょっとして日本が地球を恐竜帝国から守った見返りに、世界に君臨することを望まないとは限らない。
 いつでも人は、自分の物差しで人を量る。
 各国がスーパーロボットの開発に乗り出したのを見て、日本は日本で自らの力を誇示しようと考えた。もちろん、真ゲッターは危なくて使えない。各国を制御するどころか、難癖をつけられて孤立させられる標的になるだろう。
 ネオゲッターは確かに強力だが、各国のスーパーロボットに対して絶対ではない。アメリカだけではなく、イギリス、ロシア、ドイツでは、早くもネオゲッターに匹敵するロボットが開発されているらしい。戦争を考慮するわけではないが、抑制となるものは必要だ。
 日本が唯一世界に秀でたもの。
 ゲッター線研究。
 政府は早乙女研究所に、「人類が支配しうるゲッターロボ」 を求めた。


 「博士。これが新しいゲッターロボか?」
 設計図を覗き込みながらリョウが尋ねた。
 「そうだ。だが新しいと言っても、段階的には初代ゲッターの次世代、真ゲッターの前に考案されたものだ。」
 「ええ?どういうことですか、博士。」
 弁慶が不審そうに聞く。
 「わしは最初の恐竜帝国との闘いの間に、ゲッター線増幅器を開発した。それはあくまでも増幅器に過ぎなかった。与えられたエネルギーを増幅させるもの、だ。だが実験の最中、増幅器自体が空間から直接エネルギーを取り込みだした。理由はわからん。だがそのエネルギーはさらに増幅され、さらに取り込み、凄まじいエネルギーとなった・・・・・・・・あのとき、恐竜帝国との闘いは苛烈を極め、我ら人類が対抗しうるロボットはゲッターのみだった。あのとき、何よりも『力』が必要だった。わしは不安要素に目を瞑り、力だけを求めて真ゲッターを造った・・・・・」
 だが、人類を救うはずのロボットはピクリとも動かず。
 モニターの向こう、ひとりの若者の壮絶な死が地球を守った。
 自分の判断が間違っていたのか。
 早乙女は研究者として、技術者として、そして科学者として、成しえなかった真ゲッターの完成にすべてをかけた。
 
 早乙女の痛哭が聞こえるようだった。
 閉鎖され、政府の管理下に置かれた不自由な環境で。
 誰一人の協力を得ることも許されず。
 光明の見えない実験を繰り返し、膨大な量の計算に埋もれて。
 ただひたすら研究を続けた。
 懺悔のように。

 「結局真ゲッターが何をキィとして起動したのか、今も解かってはいない。人類を守りたいという感情、仲間を守りたいという感情。それらが何らかの影響を与えたのだとしても、あのときのリョウや隼人の想いが、今の號たちのそれに及ばなかったとは思わない。真ゲッターが動き、なおかつ神ゲッターに変化したのは、到底我々の知力の関知する範囲ではない。恐竜帝国は今度こそ滅びた。我々は真ゲッターを封印し、人類の力の及ぶロボットの制作に取り掛かろう。」
 科学者としての探求心を押し込めて早乙女は言った。
 「いいんじゃねぇか、それで。」
 リョウがあっさり同意する。
 「今後何があっても、軍事についちゃあネーサー基地とガキ共がネオゲッターでなんとかするだろうぜ。もちろんこっちも武器は付けなきゃならねえだろうが、早い話、各国に対する脅しってやつだろ。俺達はこっちで好きにやろうぜ。」
 「そうだな。もともとゲッターは宇宙開発用のロボットだかんな。地上のごちゃごちゃはあいつらに任せて、俺達はのんびり宇宙に出るか。」
 弁慶も楽しそうに言う。
 「博士、このゲッターロボにはもう名前がついてるのか?」
 「ああ、ゲッターロボGだ。一号機はドラゴン、二号機はライガー、三号機はポセイドンという。役割は初代ゲッターと同じだ。もちろん、各機の性能ははるかに向上しているし、合体後のパワーもはるかにアップしている。」


 
 早乙女の部屋を辞したリョウと弁慶は自分たちの部屋へ戻った。
 「リョウ、隼人はこっちには来ないのか?新しいゲッターロボを造るとなりゃあいつの頭が必要だろうに。おまえが戻ってからこっち、ちっとも研究所に来てないぞ。」
 「あいつはネーサーの責任者だからな。」
 「でもよ、今は戦闘状態にあるわけじゃないしよ。號たちの訓練なら俺が代わりにみてやるぜ? こっちは以前の所員たちが戻ってきてるとはいえ、ゲッターをつくるとなれば相当なもんだ。隼人がしばらくこっちに来てくれると、博士もずいぶん助かると思うんだけどな。」
 「お役所仕事は手間がかかるもんだ。それでなくてもあいつは、あちこちの機関から協力要請されているらしいからな。いくら時間があっても足りないくらいだろう。號たちにしても戦闘訓練は俺達で十分だろうが、精神面ではまだまだ保護者が必要なお子ちゃまだ。とくに號はな。翔はしっかりしているがリーダータイプじゃない。参謀か?ま、こっちは特に慌てないんだから、のんびりやるさ。」
 さらっと流すリョウ。
 たしかに世界は平和で。
 新しいロボットの開発は一刻一秒を争うわけじゃない。
 だがなんとなく、奥歯にものが挟まったような不快感。
 それでも弁慶は、ようやく研究所に戻ってきたリョウに抗することなく頷いた。



 
 リョウと弁慶が退室した後、早乙女はじっとゲッターロボGの設計図を見つめていた。
 最初に恐竜帝国が現れた時、自分たち人類が対抗しうるロボットを手にしていたことを、どれほど喜んだことか。ゲッター線エネルギーの発見は、人類を救うための神からの啓示だと思った。だからゲッターロボGの開発のときに現れた特質-------自らエネルギーを取り込む------さえも、恐竜帝国壊滅なための聖なる贈り物のように思えた。すぐさま計画は変更され、真ゲッターロボが造られた。
 リョウが戻ってくる前、政府からゲッター線を利用した新しいロボット開発を命じられて、隼人を研究所に呼びつけた時。
 隼人は早乙女から渡された設計図を見た後、静かに言った。
 
 「ひょっとすると真ゲッターは、10年前の戦いのために造られたものではなかったのかもしれませんね。今回の戦いのために必要であったのかもしれません。だからあのときは動かなかった・・・・・。仮定は仮定でしかありませんが、もしあのときこのゲッターロボGが造られていたとしたら、俺達は初代ゲッターではなくこっちで戦っていた。パワーも武器もはるかに強力なロボット。俺やリョウが怪我を負うことなく、武蔵を一人でニューヨークに行かせることなく。・・・・・・・一人で逝かせることなく。
 そして三人で戦ったでしょう。ここに計算されている武器、シャインスパークは、大量のメカザウルスやマシーンランドを破壊できるほどの威力があると思います。俺達はニューヨークで勝利を得る。ゲッター炉心を暴走させたわけではありませんから、被害は大きいといっても日本が世界から非難されるほどではない。研究所は封鎖されることなく、敵がいなくなったからには、もともとの予定・宇宙開発に取り組んでいく。ランドウ博士のプロジェクトが発表されても、自力で宇宙に行ける日本は参加せず、ランドウ博士の謀略に気付く者はいない。そしてゴールが復活したとき、それを倒す力は地球のどこにもない・・・・・・・・・」
 淡々と続く。
 早乙女は何度か自問したことがある。あのとき、真ゲッターではなくゲッターロボGを造っていれば、武蔵は死なずに済んだのかもと。だが、ここまで、これ以上を考えることはなかった。
 隼人は、この10年の間ずっと一人で戦い続けてきた隼人は、北極の地下深くで何を見たのだろう。目に映らぬ「何」を。
 「そう考えると、あのときこのゲッターロボGが造られなかったのは、必要なことだったのかもしれません。ただ、『何』がその判断をしたのか、それを思うとゲッター線に対する不信感は否めません。研究所が真ゲッターを封印し、ゲッターロボGによる宇宙開発に向かうことは良いことだと思います。」
 「・・・・・・そのとおりだな、隼人。人類は人類に合った速度で、ゆっくり進化していくのがいい。」

   今も、その言葉に嘘はない。
   だが、と思う。
   ゲッターは?
   ゲッターはそれを 認めるか?







                               ☆




 絵になる二人だと。
 ネーサー基地の誰もが思う。
 日本人離れした長身、理知的で端正な容貌の青年と、
 モデル張りの容姿で春風のような気を纏う美しい女性。
 ネーサー基地司令 神隼人と
 早乙女研究所の早乙女ミチル。


 早乙女研究所が新しいゲッターロボに着手したと聞いて、基地の誰もが隼人は研究所にかかりっきりになるだろうと思った。
 ゲッターロボ。
 隼人にとってそれは原点なのだから。
 ゲッターロボとゲッターチーム。
 隼人にとって、過去・現在・未来を通じて支えなのだから。
 と。
 誰もが諦めていたのだけれど。
 竜馬が戻ってから、隼人は滅多に研究所に行かない。リョウや弁慶が基地に来ることはあるが。
 じゃあ隼人がゲッターロボの制作に関わっていないかというと、そうではない。ミチルが早乙女研究所とと隼人を結ぶパイプ役として来ている。パイプ役というより、秘書だ。
 もちろん隼人には大佐としての役割り上、副官という秘書はいるし、翔だって秘書まがいの仕事をこなしてきたが。
 ミチルほど隼人の隣が似合う女性はいないだろう。そのあまりにもしっくりとした自然さが、周りにいらぬ気遣いをさせる。

 號は暇だ。指示されている仕事や訓練はすぐに終わる。だから余った時間を自主訓練に充てる。
 凱は悲鳴を上げている。號の訓練に付き合わされて。
 翔は・・・・・諦めている。號の気持ちが解からないではない。ネーサー基地という、隼人のカリスマ性に囚われている集団においてさえ、號が隼人に懐くさまは目立っている。號にとって隼人は特別な人間---父、兄、師、・・・母---のすべてを見ているからだろう.。母、といったら隼人は心底嫌な顔をするだろうが。
 號の甘えの年齢は、親と死に別れた小学生のときから止まっている。號にとって隼人は精神安定剤ともいえる。だから號はいつも隼人にまとわりついていた。やれ訓練をみてくれ、ほら護衛に連れて行けと。だが今、隼人の隣はふさがっている。
 リョウならばいい。敵愾心を剥き出しにして「そこはおれの場所だ!」と割り込んで行ける。號にだってそれくらいは言える。隼人に頼りにされているという自負はある。

 「つまんねえな。」
 昼食をとりながらポツリと號。
 「うん?なんだよ。」
 今日のA 定食は大盛りだな〜と嬉しくなってた凱はつい聞き返して、マズッたと思った。號の独り言に反応すべきではない。
 だが號は珍しく物思いにふけっているようだ。
 「神さんはいつか宇宙に行くことになったら、おれも連れて行ってくれると言ってくれたけど・・・・・」
 やっぱそのときはミチルさんも一緒だろうし、お邪魔虫になるのもなあ・・・・・・
 やけに殊勝な號に、凱もちょこっと保護欲というか父性愛(?)が湧く。
 「でも流さんも行くんだろ?他にも弁慶さんだって行くかもしれないし、おれだって行ってみたいさ。ある程度の人数が行くんだ。大佐だってそこのところはわかってるさ。」
 「でもさ・・・・・おれはその手はあまり気付かねえし、嫌われたら困る・・・・・・」
 乙女か、おまえは?! と突っ込みたいところをグッと我慢して、おちつけ、おちつけと凱は自分に言い聞かせる。號は未だ親の愛情に飢えている子供なんだ。
 「ご、ごほん!まぁ、お前の悩みもわかるけどよ。大佐がミチルさんと結婚するとは限らない。 おれたちがお二人はお似合いだと思っても、ひょっとしたらミチルさんはゲテモノ好きかもしれないし、大佐だって結構奥手かも。」
 ちょっと二人には失礼だよな、と思いながらも、凱は號の気持ちを向上させようとおどけて言う。チームワークは大切だ。だがお子ちゃまの號はこんなとき素直だ。
 「ミチルさんがゲテモノ好き・・・・・・」
 「おい、決めつけたわけじゃ。」
 「そう、そうだよな!ミチルさんが流のおっさんを好きになるのもアリだよな!」
 おい、號。そのおっさんというのは止めれ。大佐と流さんは同い年だ。ついでに弁慶さんも。
 「そうだ、なんとか流のおっさんとミチルさんをくっつけよう!」
 キラキラと目を輝かせる號。おい、おまえは父親の再婚に反対して、いろいろ画策し始めるガキか?!
 凱の真っ当な意見は無視された。




 「隼人さん。珈琲が入ったわ。」
 部屋に芳しい香りが満ちる。
 「ああ、ありがとうミチルさん。でも、こんな遅くまで俺に付き合わなくてもいい。」
 「ふふ、気にしないで。私もちょうど飲みたかったの。」
 ミチルは自分の分のカップを手に取り微笑む。
 隼人は珈琲を口にする。芳醇な香りとコクのある苦み。
 「やはりミチルさんの珈琲は美味い。翔がなかなか真似出来ないと言ってた。」
 「でも翔ちゃんは紅茶を淹れるのが上手よ。私よりも。」
 「信一君は紅茶が好きだったからな。」
 「翔ちゃんはお兄ちゃんっ子だったものね。」
  同じ時間を共有した者同士。やさしい記憶、穏やかな思い出。
 「隼人さん。」
 「?」
 呼びかけたまま次の言葉を発しないミチルに、少し不審そうに眼で促す。
 「隼人さんは、ゲッターから離れる必要があるの?」
 同じ時間を共有した者同士。苦しい記憶、辛い思い出。

 ミチルは早乙女研究所が閉鎖されてからの隼人をずっと見てきた。
 橘博士の研究所に移り、ゲッター線を使わないロボットの開発に取り組んでいたときも。
 世界統一プロジェクトに参加し、大怪我を負って帰ってきたときも。
 ネーサー基地で次々とパイロット達を失っていくときも。
 軟禁され、表に出れない父親の耳目として、ミチルはずっと隼人を見てきた。いつでも隼人が物事の中心に居たから。
 誰よりも戦い続けてきた隼人は、誰よりもゲッターの力を知っている。ゲッター線エネルギーを超えるエネルギーがないことを、知っている。
 その隼人が、ゲッター線が解禁された今も背を向けている。
 早乙女は隼人がゲッターに不信感を持っているからだという。それもあるだろうが、それだけだろうか。隼人が研究に関わらなくとも他の者が開発を進めていく。早乙女はもちろん、他の国々の科学者たちも。ゲッター線は人類と共存していくのだ。
 「・・・・・必要があるというより、実際問題としてゲッター線に関われないんだ。」
 少し困ったふうに言う。隼人にしては珍しく歯切れが悪い。
 「どういうこと?」
 「リョウには言ってあるが、俺の体がゲッター線を拒否するんだ。頭痛と吐き気がする。ああ、言わないでくれよ、爬虫人になったのかなんて。」
 苦笑する隼人に、
 『言いかけちゃった。』と飲み込むミチル。きっとリョウは言ったのだろう。
 「そ、それで大丈夫なの、ほかは。」
 「ああ。ネーサー基地できちんと調べた。どこも悪くない。ひょっとしたら、ゲッターに対する精神的なものかもしれないけどな。」
 隼人が精神的なことで体調を崩すと誰が信じるだろう。少なくとも私は考えないわ、とミチルは思う。
 「いつまでか、もしくは何かのきっかけで治るかもしれないが、まあ当面はこのままゲッター線を避けさせてもらうよ。下手に勘繰られるもの面倒だからな。ミチルさんには負担をかけて悪いと思っている。」
 「いいえ、そんなことは気にしないで。でも心配だわ。他の原因もあるんじゃないの?隼人さんは働きすぎよ。ああ、もう今日は休みなさいな。そうだわ、前に話したように温泉にでも・・・・・」
 お説教モードに入ったミチルに適当に相槌を打ちながら、はぐらせたかな、と隼人は思った。
 
       





                              ☆




 ゲッターロボGが完成した。
 リョウのドラゴン、弁慶のポセイドン、そして隼人の代わりに號が2号機のライガーに搭乗している。2号機なら翔のほうがいいと言うリョウに、「おれが神さんのやりたがっていることをやる!」と頑として譲らなかった。
 ネオゲッターロボのノウハウも取り入れて、最初の設計よりもずいぶんとパワーアップしたゲッターロボG。そのぶんパイロットへの負荷も半端ないものだったが、超越した体力と技能を持つ3人は軽々と大空を舞った。マイクを通して聞こえる3人の、というか竜馬と號の朗らかな(?)罵り合いと弁慶の疲れたような突っ込み。地上で見守る各人たちは苦笑するばかりだった。あれだけ言いあっていても、その操縦は0.1ミリも狂わない。
 「隼人さん、大丈夫?顔色が良くないわ。やっぱり戻る?」
 皆から少し離れたところに立っている隼人に、隣のミチルが気遣わしげに問いかけてくる。
 「いや、大丈夫だ。ゲッター線じゃない。あいつらのやりとりで頭が痛い。」
 「まあ。でも無理しないでね。」 
 クスリと笑いながらも、心配そうに言う。
 「いや、本当に気分は悪くないんだ。ゲッターロボの完成が関係あるのかな。」
 大空をわがもの顔に飛び回るゲッターから目を離さずに隼人は言った。
 『隼人さんの、体調に関する自己申告ほど信用ならないものはないんだけどね。』
 リョウ達の鮮やかなフォーメーションを見つめる隼人の、やや蒼ざめた横顔をミチルは見ていた。


 


 深夜。
 早乙女研究所の最奥の地下格納庫。
 封印された真ゲッターロボ。極秘のパスワードを知る者は二人のみ。
 早乙女は眉を顰める。開かれている扉。
 
 先客がいた。
 真ゲッターロボの足元に置かれたいくつかの金属片。それらに囲まれるかのように立つ男。
 「それは何だ?」
 「少し前、アラスカの米軍基地の海底探索船が北極の海でベガゾーンの残骸が見つけたんです。私が一番詳しいからと連絡が来たので行ってきました。ゴールの巨大宇宙船は、おそらくベガゾーンの地下に隠されていたのだと思います。もうからっぽでしたがね。ただいくつかの金属片、部品の一部だったのでしょうか、見つかったのでちょろまかしてきたんですよ。」
 ゆったりした口調に、何故か肌が粟立つ。
 「ほ、ほう。見たところ何の変哲もない破片に見えるがな。よくそれが特別だと解かったな。」
 「解かったというか、教えてもらったというか・・・・」
 苦笑する。
 「ふん?」
 「試しに、以前敷島博士が作ったコントロールルーム探知機に、ゲッター線を使って作動させたんです。作動させてうろついている間ずっと気分が悪かったのですが、ときどきスッキリして。これらの破片を見つけました。」
 「・・・・・・・・それをここに置く理由は?」
 低く唸るような早乙女の声に動じず。
 「ちょっとした玩具ですよ。深い意味はありません。」
 「玩具?」
 「ええ。出来ればこれで遊んでて、おとなしくし続けてくれればいいんですがね。」
 「眠り続けろと?」
 「願わくば。」


   人類が、その器にあっった「生」を続けられるように。


 「ゲッター線が人類の脅威になると決めつけるわけではありません。俺もゲッター線研究に加わります。」
 すっと首に手をかけ鎖を引き出す。銀色に輝くペンダント。
 「磨いてみたら、結構誤魔化せるようです。」

 漠然と考えた。
 何故自分の体ははゲッター線を拒否しだしたのか。
 ゲッター線に対して不安と不信を持ったところで、それがストレスになるような自分ではない。 (ミチルは正しい!)
 マキシム教授が発見した海底の古代遺跡は、すぐさまその姿を溶岩流の中に消し去ったけれど、
 そこに住んでいたのはゲッター線を利用する、人間と等しい種属で、
 その敵はゲッター線を憎む、人間以外の種族だったのではないだろうか。
 かつて、北極の海が凍りつく以前、遠い時間。宇宙からやってきた宇宙船。
 ゴールが利用した巨大宇宙船は、ゴールが人類の敵、ゲッター線の敵だったから利用できたのではないだろうか?

 ゲッター線によって進化を遂げていける 地球は、人類は、
 到底計り知れない荷を負っているのかもしれない。
 自分の体の不調は「何か」に呼応して、牽制、あるいは警告したのかもしれない。
 だが、今日のゲッターロボG。
 竜馬や弁慶や號達そして早乙女博士達。
 未来を輝かしいものへと引っ張っていける活力を持つ人々。
 人類はゲッターと共存していけるのではないか?

 
   人類が、その想いにあった「生」を続けられるように。

 
            前へ。
                  




        ******************************************


   ラグナロク様     22000番リクエスト


      お題は   「 ネオで隼人とミチルと號 」

 
   あれあれ? 「ネオ」ってところしかクリアしてないよ〜〜〜

   すっかりお待たせしたわりにこんなのです。なんか、最近ますますリク外してます。
   皆様、無理にリクエストしてくださらなくてもいいですよ〜〜。
   謝罪の言葉しか出ないかるらです。

      でもなんとか「ネオ」はハッピーエンドに向かえるかも!(これでか!?)
    
      う〜〜ん、踏み出しっちゃたしなぁ・・・・・・
 
            (2009.6.7    かるら)


            (2009.6.9    最後のほうを ちょっと改訂。)