黒・平安京










                             ☆










 畑を耕し、作物を作る。ヒエやアワ、大根や青菜など、仕事はいくらでもある。ときおり山に入り、イノシシなんかを捕まえる。川で魚を捕ることもある。ただ食うためにだけ働いて、長い一日が過ぎていく。


 夜半。
 弁慶はふと目を覚ました。隣には鼾をかきながら女が寝ている。
 『はぁ--------ッ』
 なんで俺はこんなところに居るんだろう。
 今まで何百回、何千回と繰り返してきた問いがタメ息になる。タメ息をつくと幸せが逃げるというが、だったら俺の幸せはもうカケラも残ってはいないだろうな。
 ゲッターロボで「渦」に飛び込んで、気がついたら一人だった。ここがどこなのか検討もつかない。ずいぶん昔の時代のような気もするが、そんなことってあるのか?あてもなく、とにかく竜馬や隼人を探したが、何一つ手がかりはない。異様な服装の弁慶に、人々は目が合った途端逃げ出すのだ。空腹で倒れそうになって、つい一軒の家から食べ物をくすねて見つかって、村人達に袋叩きにされた。
 その後、自分は遠い国の者で仲間とはぐれたのだと説明すると、なんとか信じてもらえた。金も行くところもないのなら、しばらくこの村で働くといいと言われ、とりあえずここに腰を落ち着けることにした。
 自分はもともと頭が良くない。ゲッターに乗って鬼と戦ってきたのも、元はといえば和尚様と兄弟子達の敵討ちだ。
 和尚様が引き取ってくれるまで、自分は村のやっかい者だった。ただ食って女を抱いて、やりたいことだけをやっていた。力だけはあったからそれができた。いや、力しかなかったというべきか。
 考えることは苦手だ、すぐ眠くなる。
 和尚様は俺に、まず、我慢することを覚えよと言った。何がやりたいかの前に「やってはいけない事」を我慢する。
 俺がやりたいことといったら、食うことと女を抱くことだった。食うことは良いが暴力をふるってはいけない。嫌がる女を抱いてはいけない。
 まあ、たしかに俺は気に入らないと大暴れしたけど、女に関しては始めこそ嫌がったけど、途中からは俺にしがみついて来て離れなかったんだけどなぁ。そう言ったら和尚様は「ゴホン ゴホン」と咳払いして、顔を赤くして説教しだした・・・・・ようだ。すぐに眠くなったので知らない。
 寺での生活は穏やかで気に入っていた。畑で野菜を作ったり掃除をしたり滝に打たれたり。兄弟子達も親切だった。俺をバカになどしなかった。肝心の仏の教えは全然わからなかったけれど。
 和尚様は俺を可愛がってくれた。そして俺に寺の大事な宝を見せてくれた。
 「古くからこの寺に伝わる名刀じゃ。この刀は邪なるものを倒すと言われておる。もし、この寺に何か災難が起きたら、お前がこれを守っておくれ。」
 その刀は力自慢の俺でさえ抜けない物で。
 「抜けない刀なんて、何かの役に立つんですか?」
 「伝承によれば---------------」
 説明を始めた和尚様は、すぐタメ息をついて俺をこづいた。
 「起きなさい。」
 「・・・・・・あ。」 
 「・・・・・とにかくこの刀を守っておくれ。この刀はいつか必要なとき、必要な使い手によって抜かれるじゃろう。」

 和尚様たちが鬼に変わった時、この刀は抜けなかった。だけど和尚様の言いつけどおり、俺はこの刀を守り続けている。今も。
 弁慶は立ち上がると押入れを開けた。奥には一振りの刀とひと包みのふろしきがある。
 俺がここに来て2年が過ぎた。竜馬も隼人もゲッターロボもいない。ひょっとして俺はもともとこの時代の人間なんじゃないのか。元の世界やゲッター、リョウたちは俺の見た夢じゃないのか、と思うことがある。考えると体がガタガタ震えだす。
 だがこの刀とパイロットスーツが俺の正気を保たせている。
 ここを出ても何処へ行けばよいのか解らない。情けない話だが---------


      俺は   待っている。




                  ☆                      ☆





 自分の知っている平安京とは確かに違うようだ。
 もっとも、「自分の知っている」というのは、「伝えられた歴史」であるから、些末なところでは実際と違っていて当たり前だろう。絵巻物や書物や伝承を知識として得ただけなのだから。

 それでもこの時代は、自分達に伝えられた平安時代とは異なった世界だ。


 隼人が気がついたのは、海の近くの松林だった。
 まさかゲッターロボが海の底に在るとは思わなかったが、あとの2人がどこかに倒れてはいないかと探し回った。やがて漁に出てきたらしい男が、隼人の姿を見て驚いて逃げ出したのを捕らえ尋ねた。だが震えながら答える男は、昨日今日どころか、ここしばらく、このあたりには何も変わったことはないと言う。隼人のように奇妙な服を着た者も見掛けないし、嵐や雷が鳴り響いたり、山のような巨人が現れたこともない。もし、ゲッターロボが現れたのなら、どんな辺鄙な所であれ、噂は届くものだ。真紅の巨人、鬼とも見まごうあの姿。
 ここは自分達が飛び込んだ琵琶湖ではない。自分は時間だけではなく空間も跳び越えたらしい。あとの2人とゲッターもそれぞれ時空を超えたのだろう。予想ではどこに出るにしろゲッターの中であって、当然リョウ達とも一緒にだと思っていたのだが、実際はバラバラなのだから仕方がない。まずはゲッターロボを探さねば。
 隼人が考え込んでいる間に逃げ出そうとした男を押さえ、「都はどっちだ。」と聞いた。
 渦に飛び込む前に見かけた平安京らしき遺跡。今、手がかりはそれだけだ。男が震えながら方向を指す。その方角に隼人はゆっくりと歩き出した。すくなくとも誰もが都を知っているようだ。そちらに着くのは難しくない。
 都に行って何をすればいいのかわからないが、必要があるからこの世界に来たのだろう。あの2人も何とかたどり着くだろう。・・・・・・・だろう・・・・・・だろうな・・・・・・少なくとも竜馬は。 (おい、弁慶は?!)
 
 ゲッターロボはここにはいない。だがゲッターなしでは戦えない。ゲッターロボを探し出すのが第一だ。
 この世界に俺たちと戦った鬼どもがいるのか、戦いは続いているのか、そんなことは迷うまでもない。ないのであれば俺たちがこんな所にくるはずがない。
 ゲッターは

 意味のないことをしないものだ。

 言い切って、始めて隼人は気がついたように憎々しげに舌打ちした。
 俺ではないのにな。ゲッターが欲している人間は。

   なぜ---------アイツ なのだろう。



 隼人は馬に乗って旅を続けていた。あれから一ヶ月が過ぎようとしていた。マントの下は戦闘服のままだが、別に着替えがないわけではない。金もある。
 夜道や山道なんかを一人で歩いていると、必ずといっていいほどならず者が襲ってくる。そいつらはあまり金を持っていないが、数をこなせば結構溜まる。(何をこなすんだ、隼人・・・・・?) 旅するに不自由はない。
 一度、徒党を組んだ山賊に襲われ、そいつらの根城を叩いた。火薬はともかく、銃まであるのには驚いた。武器に関しては平安時代をはるかに超える。なかなか面白い時代だ。せっかくだからと、ダイナマイトを何本か作ってみた。たくさん持つのも大変だから、強力なものにしてみた。一本で山賊たちの砦が平地になった。なかなか質のいい火薬だ。
 ゲッターロボの噂は聞かないが、鬼の噂は聞いた。都の近くに鬼の都が現れ、人々を喰らうという。空に浮かぶ都らしく、帝の軍も空飛ぶ船を造ったとか。本当ならば随分と進んだ科学だ。見渡す限りの農村や山々からは想像もつかないが。
 とにかく都へ行くしかないだろう。ゲッターの手掛かりがない以上、鬼のほうを手掛かりとするしかない。帝の軍には、四天王とか呼ばれる強者がいるらしい。元の時代でも源頼光の家来が四天王とか名乗っていたが、もし、竜馬や弁慶がそこにいて頼光の家来になってたとしたら、弁慶は文句なく坂田金時だろうな。竜馬は誰だろ。渡辺綱あたりか?まさか、頼光自身ということはないだろう。あいつに兵を束ねるのは無理だ。家来になるのも無理か。同盟を組むというより、勝手におせっかいするくらいか。あいつも集団に馴染めねえ奴だ。だが、案外弁慶は、この時代にのほほんと適応しているかもしれんな。いや、さすがに、そこまで呑気じゃないか。

 適応しているじゃないか。

 追いはぎから横取りした絵巻物に描かれていた鬼の山。その形容は確かにゲッター1だった。その山を目指す途中で荒れ寺に泊まった。夜中に忍び寄る奴がいたから様子をみていると、なんと弁慶だった。随分と髪が伸びていて驚いたが、こいつはこの世界にすでに2年前からいるという。ずっと村で暮らしていて、なんと女房らしきものもいるらしい。本人は何処へ行けばいいのかわからないし、何をすればいいかもわからない。やることがなかったんだ、と言っているが、ナ二はヤッテいるじゃないか。
 でもまあ、すぐに村に戻ってこっそり荷物を持って抜け出してきたところをみると、さほど幸せではなかったようだ。俺がこの世界に来たのは一月前だといったら、ずいぶんと落ち込んだようだが、ゲッターロボはもっと昔、何百年かまえに飛ばされたようだぞ、しかも今は山になっているといったらすこし立ち直ったようだ。 竜馬はどうしたんだろう、今どこかにいるのだろうか、もっと先の日に来るのだろうかと心配するから、俺たちがゲッターを動かせば、どこにいようとすぐに会えるさ、と答えた。そう、きっと。呼ばれるだろう、ゲッターに。 ・・・・・・俺は、探すほうだ。
 ・・・・・・竜馬が見つかる前に、ゲッター1を操縦して戦ってみたい。早乙女博士はゲッターのパイロットは3人必要だといったが、本当だろうか。俺と竜馬、俺と弁慶、竜馬と弁慶。
 
 3つの組み合わせは、同じ力を発揮できるだろうか。






           ☆                ☆               ☆




 安倍清明とかいう薄気味悪いやろうが鬼の親玉らしい。ゴキブリの触覚みたいな髪型の目つきの悪い奴だ。隼人と張りそうだ。
 方術というのか?いわゆる念力を使う。ぶっとばしてやろうと思ってもバリヤーなんかを張ってやがる。頼光たちも武人としてそれなりに力を持っているが残念ながら桁が違う。頼光もそれがわかっているから、何とか敵の居城に忍び込んで一騎打ちをしようと考えているようだ。俺に言わせりゃ、そっちのほうがもっと危ない。こんなときゲッターロボがあればと思うんだが、ないものは仕方ない。隼人も弁慶も肝心のときに居やがらねぇ。隼人、てめぇの大好きなゲッターロボを持ってさっさと来やがれ!武器大好きテロリストのくせに。
 といいつつ、竜馬もマントの下は武器庫か?!ってぐらい銃器をくっつけている。重さだけでも大変なものだ。これで跳んだり跳ねたり走ったりするのだから、人は見かけどおりってか?
 実は竜馬は頼光を結構気に入っている。女なのにはびっくりしたが、人間は男と女の2種類しかないのだから、考えてみれば不思議でもなんでもない。「男まさり」ではなく、「戦士」なのだ。
 向こうの世界で竜馬の女の子のイメージを壊す鬼娘がいたから、ちょっとだぶっただけだ。あっちのアレは親似なだけだ。肝心なのは性の別ではなく性格だ。
 頼光の刀はよく斬れた。
 鬼どもに触れることなくまとめてバッサリ。超振動とか真空波とかオーラとか、隼人がいたら意味付けするだろうが、要は斬れるか否かだ、晴明を。あのバリアーは・・・・・・・・無理だろう。クソッ、使えねぇ。
 無謀を承知で戦いに出る頼光たち。俺の力だけじゃろくな手助けもできないだろうが、これも何かの縁だ。俺がこの世界に来たのも、何かの力になれるからだろう、多分・・・・・・・
 あー、クソッ!なんでここにゲッターがないんだ?!

 わめきながら竜馬は、晴明をめざし、黒・平安京に乗り込んだ。





                          *                 



                                           
 隼人と弁慶はゲッターロボを目指していた。弁慶にはどこがどうだかわからないが、隼人はきっちりと方向がわかっているようだ。ときどき村人や旅人に尋ねながらさっさと馬を走らせる。道に迷うことはない。金も十分持っているようで食べ物や宿にも不自由しない。不思議に思って尋ねようとする前に、理由がわかった。
 とにかく隼人はよく絡まれる。
 顔つきや態度がふてぶてしいせいかと思ったが、黙って茶店で座って目を閉じていてさえ、ならず者達にからまれる。カンにさわるオーラというものでも発しているのだろうか。もとがアブナいテロリストだから、無法者の気に障るのかもしれない。
 からんできた者たちを隼人は徹底的に排除する。たとえ命は失わずにすんでも、当分は悪夢にうなされ続けるであろうくらい冷酷に。まぁ、そいつらは他の旅人たちにも暴力をはたらくような奴だから同情はしないが、さすがに憐れみを感じることもある。アレじゃあな。
 で、戦利品というか慰謝料というか、貢物というか。俺たちの路銀は増えていくわけだ。
 「よぉ、隼人。」
 「なんだ。」
 「お前はきっと、何処へ行っても平然と、自分の思い通りに生きていけるんだろうなぁ。」
 「何言ってる。お前のほうこそ、この世界になんの違和感もなく溶け込んでいたじゃないか。」
 女房まで持っていたということは、それだけこの世界の村人たちに受け入れてもらえたということだろう。弁慶なら不思議はない。本質は穏やかで、人に害を与えようとすることはない。それに見た目も能力も、この時代の住人と大差ない。( ? ・・・・・褒め言葉か、それって。 )
 「溶け込んでいるというより、バカにされてたけどな。いつものことだけど。」
 「本当にバカにしているのなら、女房なんか世話されないさ。村を追い出されていただろう。昔の人間といったって、素朴だとは限らんさ。」
 前を見つめたまま、つぶやくように言う。
 弁慶は、時空を超えたことにまだ何の意味も見出せないけれど、隼人とこうして旅が出来たことは良かったと思う。研究所では隼人と口をきくことはほとんどない。竜馬とは結構つるんでいるが。隼人と仲良くしたいと思うわけではないが、(そんな雰囲気あるはずない。)思っていたほど狂人でもないようだ。( ? ・・・・・・褒め言葉だよな、これって。)

 少し大きな村にさしかかって、そのまま馬を進めていくと、村の中央に人だかりができている。何十人もの男達が集まって口々に言い合っている。手には鍬や鎌を持っていて、なかなか物騒な雰囲気だ。
 「もう我慢なんねぃ!」
 「近隣の村はほとんどやられた。」
 「このままじゃ、おら達の村がやられるのも時間の問題だ。」
 「女や子供達だけでも遠くに避難させんと。」
 「そうはいってもいつまで非難させりゃいいんじゃ。」
 「この村がやられたら、帰るところもないぞ。」
 悲痛な面持ちで村人たちは黙り込んだ。
 そこに。
 「あっ、お坊様!」
 目ざとい一人が弁慶を見つけて大声を出す。
 「お坊様、お願いでございます。おたすけください!!」
 あっというまに村人に囲まれた弁慶を見て、隼人、
 『ほぅ。弁慶が頼りになる坊主に見えるとな。やはりこの世界は面白い。』
 我関せずとさっさと通り過ぎようとする。(おい!)
 「えっえ?何だよ。あっ隼人。待て、待ってくれ!おい、ちょっと、離してくれ!!」
 結局、わやわやと口々にお願いされすがりつかれ、まぁ日も暮れてきたことから庄屋の家に泊まることとなった。
 村人たちに頭を下げられ頼まれたのは、ここから五里ばかり先の山に砦を持つ山賊を退治してほしいとのことだった。なんで俺が、と戸惑った弁慶だが、御坊の神通力で何とかお願いいたします、と言われ、
 「神通力?」
 きょとんとした弁慶に、庄屋は始めから一言も口を利かず部屋の隅に座っている隼人を指差し、
 「あのような恐ろしげな鬼を使役している坊様ですから、法力もとてつもないものをお持ちなのでしょう。」
 と、真面目な顔で言うのだった。
 弁慶が背筋に冷たい汗を感じるまえに、隼人がギロッと村人たちに目を向ける。
 ズザザザザザーッと後ろに下がる村人の一番後ろに、弁慶もまた隠れてしまった。
 「・・・・・・・・・・・・まぁいい。その砦とやらには何人ほどいるんだ。武器は何を持っている?」
 ボソリと隼人が聞く。
 「は、はい!山賊どもは百人ほどです。もとは都の兵士だった者が脱走してきたらしいです。始めは10人くらいだったんですが、なにしろ刀だけではなく鉄砲や火薬も持っていて、どんどん力をつけていって、とてもわし等では手に負えません。他の村では皆殺しにされたり、村をやかれたり、娘たちを攫われたり・・・・・・・」
 「都は今、鬼の都を攻めるとかで、とてもこちらまで兵を寄越してはくれません。」
 「我々の力ではとてもとても・・・・・。出来る限りのお礼はさせていただきます。どうか、お願いいたします。」
 
皆、真剣な顔で弁慶と隼人を見る。
 「お願いされてもなぁ・・・・・・そんな大人数で、しかも鉄砲も持っているとなると・・・・・」
 弁慶は困惑した。そりゃ、助けてやりたい。でも、俺達はゲッターロボを見つけなきゃなんないし、大体、隼人が人助けなんてするわけないし・・・・・・(こっちが本音!)
 「わかった。明日行ってやる。」
 逡巡している弁慶をチラッと見ないで隼人が答える。
 「ええっ?!」
 弁慶をはじめ、全員が隼人を見た。相変わらずの無表情だ。
 「あ、ありがとうございます!!」
 「今夜はゆっくりとお休み下さい。今、お食事をお持ちいたします。」
 「お風呂もすぐにご用意いたします。あ、そちらの鬼様は、何を召し上がれますか?やはり、けものの肉なんかを・・・・」
 「あっ、ふつうのメシでいいです。おれと一緒!」
 『人肉をよこしな。』と隼人が言うまえに弁慶が慌ててフォローする。隼人が言ったら、冗談ではすまないだろ?

 翌日。
 村人皆に見送られ、お弁当まで貰って。
 弁慶は隼人に聞いてみた。
 「お前が人助けするとは思わなかったぞ。」
 「人助けじゃない。火薬が手に入るかと思ってな。」
 「なんで火薬?」
 「お前、まさかゲッターを素手で掘り起こすつもりじゃないだろな。」
 「あっ・・・・・・」
 「どんな状態かわからんが、山として描かれているんだ。半分くらいは土に埋もれていると思ってまちがいないだろう。前に他の山賊な砦を潰したときに少し火薬を手に入れた。なかなか質がいい。これから先、なにがあるかわからん。使い慣れた強力な武器はあったほうはいい。」
 使い慣れた、っていっても、俺は別に火薬なんてもとから使い慣れてなんかいないぞ。ゲッターに乗るようになって、やっと武器を手にしただけで。武器フェチのお前と一緒にされてもなぁ。 声に出さない分、弁慶も隼人との付き合い方がわかってきたようか?
 「おまえ、以前にも山賊とやりあったのか?」
 「あのときは30人ほどの集まりだったかな。少しの銃と火薬があった。」
 「お前は銃なんて持っていなかったんだろ?今はひとつ持っているみたいだけど。」
 「敵さんのを奪えば済むことだ。第一、やつらみたいなヘタクソに、俺がやられるものか。」
 弁慶は、ときどき隼人、そして今はいないけど竜馬に感心する。普通ならとんでもなく大変なことであっても、この2人にとっては屁でもない。隼人にとって、銃を向けられるということと、銃をささげられるということは同じことなのだろう。よく、「人の物はおれのもの」という嫌なやつがいるけど、コイツの場合、「人の物」ということすら怪しい。まァ、いいけど。( 結局それかよ、弁慶!)


 山賊たちとの戦闘はあっという間に終わった。弁慶は隼人に娘たちの護衛だけを命じられ、流れ弾に当たらぬよう隠れていた。ときどき、娘達を人質にしようとする輩が来たが、殴りつけただけで弁慶の仕事は終わった。娘達がしがみついてきたのがちょっとうれしい。むふふ・・・。
 隼人の戦いぶりについては、隼人の人間性を傷つける必要もないから黙ってスルーしよう。各自、適当に想像してくれ。俺の言えるのは、その想像以上だったってことだ。
 俺達は娘達と砦に会った金品を荷車で村に届けると、そのまま2日ほど砦にいた。隼人が必要なものを作ったあと、砦はきれいに消滅した。さすがに隼人の腕はいい。

   目指すは ゲッターロボ。 




     

                *                    *








 ゲッターロボは隼人の予想通り、半身、土に埋もれていた。コレを人の手で掘り起こすとなると大変な労力だっただろう。隼人の作ったダイナマイトがあったおかげでゲッターを作動させることが出来た。先見の明というか、思慮深いというか、とにかくすごい奴だ。弁慶は感心しきりだ。だが、肝心の隼人は。

 落ち込んでいる。
 晴明とかいう薄気味悪い野朗が襲ってきたとき、ゲッターはまだ始動していなかった。隼人がいろいろボタンだのレバーなどをいじってようやく動いた。それだけでも俺は隼人がいてくれたことに感謝したが、肝心の隼人は。

 ゲッター2で戦っても、ゲッター1で戦っても、敵に何のダメージも与えられなかった。そればかりか、敵の捨て台詞、
 「つまらん、早く流 竜馬を連れて来い。」なんて言われて。
 落ち込んでいる。

 ゲッターはその力、俺達が今まで幾度となく見てきた力を出す事は」なかった。今までの戦闘から見ても、もう少し戦えるはずだと俺でも思った。長期間土の中に埋まっていたことだし、どこかに異常があったかもしれない。だが、隼人はそうは思わない。
 パイロットが2人だったから、いや、竜馬がいないからゲッターロボが力を出せないでいる、と思い込んでいる。
 なぜだろうな。確かに竜馬は戦いのセンスというか、それは3人の中で一番優れていると思う。でも、隼人もさほど差があるとは思わない。ゲッターとの相性なのかもしれないけど、隼人にとってはそれが一番大事なことらしい。竜馬は、俺ですら直せる故障も直せなかったけどな。隼人はゲッターとの相性以外では、誰よりも優れた才を持っているのにな。それでは駄目なのだろうか。

      アイツは、 (竜馬か?隼人か?) ゲッターに取り憑かれている。

       俺にはわからない。 










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   朱里様    1500番代理リクエスト

    お題は       OVA「新」で  「 かっこいい男達 」


  はぁ-----。
   もう、何も申し上げられません。コレの何処が「かっこいい?」
  ほんとうはバッタバッタと敵を投げ飛ばす戦闘シーンを書くつもりだったんですが。ついでに美女も出す予定だったんだけど。
  遠い目。

   朱里様、申し訳ありません。でも、これはまだ「新」の序章ですよね。まだもしかしたら、万一ですが続くかも?しれませんので、
 ひらにひらにご容赦を!!
                (2006.6.30      かるら )