陽だまりの翳り







      座間の米軍基地経由で隼人が帰ってきた。
      ヘリに乗り換えて研究所に戻るくらいなら、一言いってくれれば
      ゲットマシンで迎えに行ってやったのに。


         
                             ☆




 「お帰りなさい、神さん。」
 所員が総出で出迎える。皆、ホッとしたような顔をしている。
 「久しぶりだな、隼人。」
 と、声を掛けようとしたリョウの前に、ドッとばかり、所員達が駆け寄った。
 「神さん、お待ちしていました。これを・・・・・・」
 「いえ、こっちを先にお願いします。先週からこれが・・・・・」
 「ちょっと待て。こっちは半月前から待ったんだ。」
 「半月前だって?こっちは2ヶ月前から困ってんだよ!」
 あっという間に人だかりができて、追い出されたようなリョウは憮然とした。
 「?何だ、あいつら・・・・」
 「いやー、みんな困ってたからなあ。」
 したり顔の弁慶。
 「なんだよ、弁慶。」
 「いや、ここんところずっとさ、早乙女博士が研究所の仕事ほったらかしでさ。」
 「はぁ?何やってんだよ。」
 「新しいゲッターロボにかかりっきりで、地下研究所から出てこないんだ。いくら研究所の運営を他の博士たちに任せてるといっても、所長なんだからさ。政府への対応や経済界とかの名士達との歓談、他にも総合的なデータの確認とか、早乙女博士じゃないと決済できないものも多々あるし。博士は『お前達にまかせる。』のひと言で済ますけど、各自の一存で決められることじゃないって、所長代理を任せられている橘博士を筆頭、みんなぶっ倒れる寸前だったぜ。」
 「・・・・・・・・へぇ・・・・詳しいな、弁慶。俺はちっとも気づかなかったぞ。」
 ちょっと驚いた。
 「リョウは自衛隊から来ている奴らを、ゲッターパイロットに仕立て上げるのに忙しかったからな。無理もないさ。」
 ハイテンションのリョウに着いていくなんて、体力自慢の弁慶にだって無理だ。弁慶は自発的に他の部署との連絡係りを受け持っていた。(サボり、ともいう。)
 現在、早乙女研究所には二体のゲッターロボがある。初代ゲッターとゲッターロボGだ。どちらのゲッターも、操るには相当の体力と技術がいる。なんといってもゲッターの重Gだ。ただ飛び回るだけなら、ある程度乗りこなせる人間は少なくない。だがひとたび戦闘となると、更なる重圧が全身に課せられる。殴られたり爆撃を受けたりすれば、胃の中がひっくり返ってしまう。
 幸い、今はそういった意味での敵はいないから、単純な動きだけ出来ればよいともいえるが、だが、いつまた百鬼や恐竜帝国みたいな敵が攻撃してこないとは言えない。想定は最悪を考えるべきだ。ということで、パイロット達に対するリョウの訓練はあまり手加減がない。(全くの手加減なしでは、全員潰れてしまうだろう。)
 候補生たちは皆、自衛隊から選出された優秀な兵士ばかりであるが、リョウの課す訓練についてこれる強者は稀だ。気力・体力・技術。それ以上に求められる咄嗟の場合の反応速度。一瞬先を見越す戦闘センス。訓練を始動しながら、「ちょっと酷かな?」と思わないでもないリョウだが、地球の守護神・ゲッターロボに求められている期待と責任は重い。自分達-------リョウ、隼人、弁慶-----が月に行った後、研究所と地球を守るのは彼らだ。たとえ自分達が初代ゲッターで戻るとしても、ちょっとそこまでという距離じゃない。その間は持ちこたえてもらわねば。戦いって奴は、最初の一時間くらいで雌雄を決することが多い。
 早乙女研究所の地上部分は、何の変哲もない普通の研究施設だが、その地下部分は世界有数の軍事重要施設だ。ただでさえスパイ防止のためのダミーがほどこされていた上、幾層にも分かれてリョウだって迷子になりかねない。 別にリョウが方向音痴というわけではなく、どんどん地下層が広がっているからである。縦にも横にも。一応、案内表示板らしきものはあるが詳細ではない。シークレット部もあるのだ。きっと、地下部の全貌を知っているものはいないだろう。各自、自分の受け持ち範囲を覚えているで精一杯だ。まぁ、それでも不都合はない。
 「でも、何で隼人は研究所に帰ってきたんだ?NASAへ行くんじゃなかったのか?」
 リョウが不審そうに問う。たしか、月面基地へ行くためにNASAへ出向していたはずだ。それがなぜか急遽、米軍のアラスカ基地に行くことになって予定が半年も遅れた。そのあとてっきりNASAへ戻ると思っていたのだが、日本に帰ってきている。
 「俺も詳しいことは聞いていないよ。きのう突然、隼人が帰ってくるって皆が騒ぎ出したんで知っただけだ。まぁ、あとで本人から聞こうぜ。・・・・・・・・アレに割り込めたらな。」
 弁慶の視線の先に、隼人に群がる所員達の姿がある。まさしく「群がる」だ。砂糖に集まる蟻のようだ。隼人は皆より頭ひとつぶん背が高いから、アイツの表情はよく見える。いつもの無愛想な無表情で、次から次へと手渡される書類を見ながら皆が口々に発する報告を聞いて何やら指示している。あんなに一度に喚かれて内容を聞き取れるなんて、アイツは聖徳太子か?
 あいかわらずの人外能力を発揮している隼人を、リョウ達は部屋の片隅で見ていた。



 「ようやく落ち着いたようだな。」  

 次の日の夜。リョウと弁慶が隼人の部屋を訪れた。
 「さっきまでかかっていたようだけど、体大丈夫か?夕べはろくに寝ていないんだろ?」
 「ほとんどが最終的な確認を必要としたものばかりだからな。直接修理したり、作動させたりするものは少なかったからたいしたことではない。頭の中での計算ばかりさ。あとは社交的なお付き合いってやつと、政府への対応だけだった。」
 いとも簡単に言ってのけるが、その計算の確認とやらで所員の皆が必死だったんだろうが。ミスがないかとか、他との照合に違いがないかとか、それに社交的なことや政府への対応こそ、ある意味、研究所の存続にかかわるんだろう。でなきゃ、橘博士があれほど気に病むわけがない。胃薬を手放せなかったと聞いている。誰もがお前みたいにサクサクと物事を処理できると思ったら大間違いだぞ。
 あまりにも平然とされると、かえって無性に腹が立つ。
 「ところで隼人。なんで急に帰ってきたんだ?NASAに行くんじゃなかったのか?」
 リョウの雰囲気がアブナくなったのを察して弁慶が尋ねた。
 「アメリカ政界での派閥争いが少しばかりうるさくなってきてな。軍の上層部もそれに呼応してあれこれ策が巡らせられ始めた。ヘタに向こうに残っていると勢力争いに巻き込まれかねんからな。さっさと戻ってきた。もともと客員扱いだから、誰の命令を聞く義務もないし、アラスカ基地での仕事も俺がやらなきゃならんところは済んでいるからな。(もちろん、残って苛酷な作業に従事させられている奴はいるけどな。誰とは言わないが。)日本での大型宇宙船建造に手が足りないからと断ってきた。実際、早乙女博士は新しいゲッターロボの開発に取り組んでいて、それどころではないようだからな。」
 「開発に取り組んでいるって言うより、取り憑かれているって感じだぜ、あれは。」
 「地下研究所に閉じこもりっきりだってな。今日、早乙女博士に帰国の挨拶をしようと思ったのだが、マイクで『研究所を頼む。』とだけ言われた。」
 「今のところ敵はいないのに、どれほどゲッターを強くしたいのかなあ。」
 「ゲッターロボは戦闘用のロボットだが、ゲッター線は別に戦闘用のみのエネルギーじゃない。博士には博士の考えがあるんだろうよ。」
 「そりゃそうだ。それに宇宙に出たら俺たちの予想もつかない強大な敵がいるかもしれねぇからな。ゲッターが強くなるに越したことはねえ。」
 「大きく出たな、リョウ。だが、俺たちの行動範囲の宇宙といってもまだ月までだ。いずれもっと先までといっても、せいぜい太陽系だ。」
 「ちっせえこと言うなよ、弁慶。大型の宇宙船ってやつができたら太陽系なんてかる〜く飛び越せちまうぜ。なあ、隼人。」
 「おまえのいうとおりだがな、リョウ。いくら宇宙空間を自在に進める船があっても、速度がマッハじゃどうしようもない。太陽系を出るまでに爺さんになってる。ゲッターロボだってまだマッハだからな。宇宙を舞台にするとなると、亜光速でもまだむずかしい。」
 「ワープ航法とかあるんじゃねぇの?」
 「SFの読み過ぎだ。俺は知らん。」
 「隼人が知らないとなると、まだ地球にはないってことだな。」
 「じゃあ宿題だな、隼人。」
 「簡単に言うな。いくら俺でも空間の捻じ曲げ方は知らんぞ。」
 「いつもは俺たちにとっては難しいことでも、おまえは平気でこなして当たり前って顔するじゃねぇか。お前にとっても難しいことなら珍しい。せいぜい努力しな。性格のねじれ曲がり方は天下一品なんだから、空間ぐらい捻じ曲げられるだろ?」
 茶目っ気たっぷりに目をきらきらさせながら言うリョウに、
 「・・・・・・・・・・おれもしばらくデスクワークばかりでストレスが溜まっていてな。明日、訓練に顔を出すぞ。」
 「おう!ちゃあんと運動不足のおまえに合わせてやるよ。基礎訓練から始まってゲッターの曲芸飛行まで順序よくな。な、弁慶。」
 「え?ええっ!!」
 急に温度の下がった部屋からこっそりと抜け出そうとした弁慶は、リョウの無邪気な声に思わず声が裏返ってしまう。
 「お、おい、リョウ!俺を巻き添えにするなよ!」
 「いやあ。お前も最近は動きがいいじゃねぇか。アラスカくんだりで雪遊びしていた隼人となら、いい相手になりそうだ。」

 ・・・・・・・・・・・頼む、リョウ、隼人。人を量(はか)るのに、お前ら自身を基準にしないでくれ・・・・・・・・
 いつのまにか、候補生を2隊に分けての模擬戦闘訓練について楽しそうに計画を立てだした2人を見て、ゲッターチーム唯一の常識人(?)の弁慶は切実に願った。




               ☆                   ☆ 




 隼人が戻ってから、研究所の諸事はすべて隼人が取り仕切っている。「大型宇宙船のほうはいいのか?」って聞くと、「橘博士が主になって設計してくれている。」とのこと。そうだろうな。橘博士は学究肌の大人しい人物だ。居丈高に無理難題を言ってくる政府の高官を、慇懃無礼に応対して適当に丸め込んだり、それとなく脅しつけたりして(こっちの方が多いか?)研究所の意見を押し通すなんて芸当は、人の良い博士にはとても無理だ。隼人のやつは、「なんでお前、そんなこと知ってんだ?」というような弱みをいくつも知っている。その弱みというのも、個人的なものというより政党や派閥に関連したもののようだ。そのせいか最近、政府からの使いはひどく丁寧で控えめなものだ。見ているほうが気の毒になるくらいオドオドしてる。少し前までは、所員の方が書類を持って右往左往していたが。

 研究所には各国からの問い合わせや、衛星からの観測データがひっきりなしに入ってくる。研究所独自の観測衛星からはゲッター線に関するこまかいデータが届けられる。分類され集計されたそれらの莫大な量を統括するのは隼人の仕事だ。ほかにも新しいゲッターロボの製造のための資材や計器など、入手しにくい物品のリストが所長室のデスクに山と積まれていた。「早く取り寄せろ」という早乙女博士と、「もっと時間をいただかないと到底無理です。」という業者の間に入った資材部の責任者が胃潰瘍で入院したのはつい最近だ。途方にくれていた資材部だが、隼人が来てからあっという間に資材が入手しだした。どんな手を使ったんだか。
 「教えていただけますか?!」と目を輝かせた資材係りだったが、隼人がスッと口の端を持ち上げるような笑みを浮かべたものだから、「け、けっこうです。」と回れ右していった。どうせ聞いたって、隼人にしか使えない裏の手だろう。(奥の手、とはいえないだろな。)
 候補生を2隊に分けての模擬戦闘は、3戦やって2対1でリョウの率いる隊が勝った。上機嫌なリョウに対して無表情ながら不満気だった隼人は、
 「やはり少し、体がなまっていたな。」
 と呟くと2日ほど訓練に参加してリョウとやり合っていた。もちろん俺は遠慮した。素手でさえ危険なのに銃火器まで使っての訓練だもんな。敷島博士も参加したがったそうだが、丁寧にお断りされていた。研究所を壊されては堪らない。
 そのあと、隼人は候補生の訓練も手伝ってくれたけど、あいつが調整しなおしたトレーニングマシンで、皆の食欲が一気に下がったのは困りものだった。救護室は満員御礼だったな。
 それでもおかげさまで何とか、何人かはゲッターのパイロットとしていけそうだ。まだ実戦の経験はないし、(当たり前だが)宇宙に飛び出したりはしていない若葉マークだけど、これから先も訓練を重ねていけばきっと、ゲッターロボを扱いこなせるだろう。
 俺はリョウほど月面基地に期待はしていない。というより、おれはこの地球、研究所での生活で満足している。それは俺があの2人と違って平凡な人間だからかもしれない。穏やかな日々が結構、気に入っている。
 でも、あの2人と一緒にいるには楽しい。
 だから俺も月へ行く。
 3人で駆け回る宇宙は、どんなに面白いものだろう。





           ☆                 ☆                 ☆





 早乙女は手摺りに手を置いたまま凝視していた。彼の眼下で作り上げられていく新しいゲッターロボ。
 おそらく彼が創り得る最後の、そして最強のゲッターロボ、真・ゲッター。



 十数年前。
 驚くほど星が流れる夜だった。地球に降り注ぐ雑多な宇宙線のなかに、信じられぬエネルギーを持つ宇宙線を見出したのは。
 地球にあるすべてのエネルギーを、はるかに上回る脅威のエネルギー。枯渇していく地球の資源を取り合って諍いの耐えない人類にとって、それは神からの贈り物とさえ思われた。
 神からの贈り物。
 無邪気にそれを受け取れるほど、人類は 『善きもの』 なのだろうか。
 疑問に思う間もなく、ゲッター線が発見されたと同時に世界の各地で密やかに、されど見せつけるように起こり始めた不可解な事件。信じがたい
が、認めざるを得なかったもうひとつの主たる種族。地球の先住者、爬虫人類。

 人類が太古の昔、「猿」と「ヒト」とに分かれたように、ハチュウ類も力はあるが知力のない大型恐竜と、高い知能を有する恐竜一族とに分かれたのだろうか。
 だが、その差は、人類の場合に比べてかなり大きいように思われる。想像の範囲を超える。ひょっとして何かの-------干渉があったのだろうか。
 現実はゲッター線が恐竜を滅ぼし、人類が地球の担い手となった。
 ゲッター線。
 金属変化すら促すエネルギー。有機物にも影響を与えないとは言い切れない。むしろ、大きく関わっただろう。
 ------変化。 同じエネルギーであって、人類に進化を。ハチュウ人には退化を。
 その差は、何を基準にしたというのか。 
 
 ゲッター線を発見したとき、自分は純粋に驚喜した。これほどまでのエネルギーの存在を、誰が想像しただろう。地球史上かつてない発見を、誰でもない、自分自身が為したのだと。そのときの陶酔は、いまなお、私の中にある。
 その後、思いもしなかった敵、人類の存亡を賭けた恐竜帝国との戦いが始まったとき、私はゲッター線に感謝した。ゲッター線がなければ人類は、あっという間に滅ぼされていただろう。自分が人類を守りうるという高揚、そしてこの凄まじいエネルギーを制御できるパイロットを得たとき、私は神の恩恵だと思った。無理だと思いつつ探し出した、人の能力をはるかに超えるパイロット達。まさしくゲッターロボのために生まれてきたような。ゲッターを動かすために。ゲッターを目覚めさせるために。
 ふと。
 早乙女は背筋が冷えた。
 何だ?
 今のは。
 今の思考は。

 はるかな太古。
 ゲッター線は何をした?
 地球の覇者として栄華を極めていた恐竜帝国を滅亡させたのではなかったか。彼らはゲッター線さえ降り注がなければ、今なお地球を支配していただろうに。
 人類はそのとき影も形もない。

 ゲッター線は、ひとつの種を滅ぼすことができる。
 ゲッターの

        意思で。


 激しく頭を振る。
 自分は地球のエネルギー問題解決のために宇宙線を研究してきた。そして、絶間ない観測の結果、ゲッター線エネルギーを発見した。恐竜帝国が襲ってきたとき、地球を守るために戦闘ロボットを考え、そのエネルギーとして最高のゲッター線を使うべきだと確信した。
 新たな敵、百鬼を倒すために更なる力を持つロボット、ゲッターロボG。そして今、ゲッター線の秘められた能力を顕す為に真なるゲッターの開発に取り組んでいる。
 地球の平和のために。
 ?
 また、新たな敵があらわれるのか?
 だが、その敵は、なぜ地球を襲うのだ?
 地球には、地球に住むものが必要とするものしか存在しない。ゲッターロボGの能力を超えるほどの敵が欲するものを、地球は持ってはいないはずだ。
 真・ゲッターの敵は
 何を欲するのだろう。


 真ゲッターの敵が存在するとは限らないと思いつつ、早乙女は、湧き上がる不安を押し殺すことができなかった。計算では真ゲッターは、宇宙から降り注ぐゲッター線を自ら無限に増幅させ、自身のエネルギーに転化させることができる。人の手を借りずに満ちるエネルギー。はたして、人の思惑どうりに動いてくれるだろうか。
 だが、それでも自分は研究から離れることはできない。このエネルギーに絡め取られている。
 再び。
 何かが起ころうとしている。終章ではなく、序章として。
 そのとき自分は
 そして あの若者たちは。


       ゲッターと対等で いられるだろうか。




                           ☆




 「ま、こんなところかな。」
 リョウがソファにごろんと転がりながら言った。
 「ライガーは矢部 明、ポセイドンが小野田 勉。ジャガーは宮崎 翔、ベアーが内藤 剛夕。・・・・・・・・いいんじゃねぇか、なぁ隼人。」
 名簿を見ながら確認する弁慶に、
 「お前達がいいと言うならそれでいい。」
 データのチェックを終えた隼人が応える。
 「俺たちと比べるとまだまだだけどな。敵が襲ってきてるわけじゃなし、ま、こんなものか。おい、弁慶。イーグル号の操縦、ちっとは上手くなったか?」
 ニヤニヤ笑いながらリョウが言う。
 「なんだと!バカにすんなよ、オレ様の腕を。」
 
 月面基地への派遣は今のところ延期されているが、研究所の仕事は変わらない。早乙女博士の代理として研究所を取り仕切っている隼人は、すでにゲッターロボのパイロットを降りている。リョウと弁慶を中心に、初代ゲッターとゲッターロボGのパイロットが選ばれた。
 「ところで隼人。早乙女博士はまだ穴倉に閉じこもっているのか?まだまだ未完成なのか、その真ゲッターとやらは。」
 「地下研究室と言え。さあな、おれも行ったことがないから知らん。」
 「えー、お前も見たことないのか、ソレ。」
 弁慶が驚いたように言う。そんなに秘密裡なものなのか?戦闘時でもないのに。
 「ゲッター線研究は博士のライフワークだからな。究極のエネルギーを自分の目で見極めたいと強く願っている。発見者としての自負も責任もあるんだろう。ゲッターは博士に任せておくさ。オレが行ってもさほど手伝えないし、研究所の雑務もある。それに敷島博士が張り切っているからな。オレの出番はないさ。」
 さらりと流す隼人に、リョウは 『おや?』 と思った。
 3人の中では、隼人が一番ゲッター線に惚れこんでいると思っていたが。以前だって、暇さえあれば自分からゲッターロボの開発に参加していたのに。
 アラスカでプラズマなんとかっていうのを開発していたらしいが、そっちのほうに興味が移ったのか?俺はゲッター線を引き継ぐのは隼人だと思っているけど。月面基地に照準を合わせているせいか?まぁ、それでも、ゲッターと縁を切るなんて出来っこないだろうが。
 オレは、どうせ使うならより強力な力のほうがいいと思っている。ゲッターを上回る力なんて、この宇宙にだって滅多にないだろう。そりゃ、戦闘がないならそれほど強い力は必要ないかもしれないけどな。でも、「大は小を兼ねる」っていうじゃないか。やっぱ、使うならゲッター線だろう。特に戦闘のときのあの凄まじさ。体中が震え、ワクワクするぜ。

         そのときは   まだ
         ゲッターの恩恵を

         疑うことは  なかった。 









        それは



                    遠い    宇宙から


                    
              時の       果てから





        やってきた。








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   ネタがなくて困ったときは「陽だまり」です。(おい!!)
 
  今回は早乙女博士をメインにしようかな〜〜と思ってたのですが、まだ正常モードの博士ではノレないですね。(なんちゅうー性格なの、かるら君。)いや、「陽だまり」ですからね、これ。
          
               (2006.7.30  かるら)