陽だまりの憂鬱








 
百鬼帝国が滅んで平和がきた。
 世界も日本も研究所も、しばらくはお祭り騒ぎだったが、復興が急ピッチで行われるにつれ、平穏を取り戻した。敵はいなくなったが、まだまだ安心はできないとのことで研究所は引き続き軍事施設としての機能を有していた。
 リョウも弁慶も、毎日、自衛隊から派遣されてきたパイロット候補生を相手に日々、合体訓練に励んでいた。
 隼人は、早乙女博士の助手として、ゲッター線研究に携わっていたが、その他にも研究所の庶務や雑務そして外交面も任されていて大忙しだった。早乙女博士はもともと研究以外は目に入らない人間で、他の所員たち(特に庶務の人間
)は、ずいぶん苦労したが、隼人が取り計らうようになってからは、スムーズに事が運び、皆大喜びだった。とにかく何でもわからないことは、隼人さんに聞けばいい、というのが所員全員の常識になっていた。
 
 最近、リョウはおもしろくない。
 もともと空手の鍛錬一筋に育てられたリョウは、訓練そのものを嫌がることはなかったが、やはり戦う相手がいない訓練というものはつまらなかった。敵がいるのといないのとでは、大違いだ。戦闘能力の高い者ほど、その傾向は強い。それでも平和が大切なのはわかっているので、口に出したりはしない。が、思い切り暴れたい、という欲求や不満はあった。ゲッターの合体も戦闘訓練も、候補生相手では物足りなかった。

 「あら、今日はまだ、みんな来ていないの?」
ミチルが不思議そうに尋ねた。夕食の食堂は、いつも満員で賑やかなのに、今夜は研究員たちがいるだけで泊り込みの候補生たちの姿はない。
 「リョウがしごきすぎて、みんな、バテちゃったんだよ。」
弁慶が3人分ほどの食事を前にしている。隣で、リョウがムスッとした顔で食べている。
 「どうしたの、リョウくん?」
不審そうなミチルの問いかけに
 「別に。ただ、あいつらも、いつまでもお客さんってわけにはいかないから、ちょっと、訓練内容を俺たちに近づけただけだ。」
不機嫌そうにつぶやく。
 「俺たちにって、お前並にだろうが。誰もついていけっこないぞ。」
 「アレでも、ずいぶん手加減したんだ。!」
いっそう 機嫌を悪くして怒鳴る。
「まあ、そうだろうけどよお。だけど、やっぱりアレは酷だぞ。みんな吐いちゃって医務室で寝てるぞ。」 
 「ふん、ひ弱な奴らだ。」
普段のリョウは、快活で、自分の運動神経や戦闘能力が異常というほど常人離れしているのをよく知っているから、候補生に対してここまできつくあたることはない。弁慶もミチルもそれをよく知っているから、不機嫌なリョウに顔を見合わせるばかりだ。たぶん、平和になって、手持ち無沙汰というか、ちょっとした一過性のうつ状態だと思っている。
 「隼人がいたらなあ。」
ため息をつくようにいう弁慶に
 「なんで隼人がでてくるんだよ!」
おもいがけずムキになって言い返すリョウに驚いて、
 「いや、だってよ、隼人がいたら、合体訓練も思い通りのスピードやパワーや技でバッチリだし、もし、多少ヘタしてもなおのこと、いい争いから殴りあいになって、ストレス発散に最適だろうにと思ってさ。」
 まったく、この2人の殴り合いときたら、きっとこの2人、前世では敵同士だったに違いない、と思えるような背筋も凍るようなものだ。よくこれで、お互い死なないもんだと、みんな感心している。それでもって、けんかの原因はというと幼稚園児のけんかか?というくだらないものだ。だから、あれはストレス発散というより、単に力が有り余ってじゃれあっているだけだというのが、研究所に居る全員の意見だった。
 ますます、むくれてしまったリョウに頓着もせず、
 「ミチルさん、隼人は明日も研究のほうで忙しいのかな。2時間ほどでも訓練に参加できないかなあ。」
 「残念だけど、隼人さん、今、研究所にいないのよ。」
 「へえっ、気がつかなかった。」
弁慶も、いまさらながら、隼人と遠くなっていたことに気がついた。いつも共に戦っていたのに
 
「おとといから、東京に行っているの。首相官邸での会議や防衛庁、科学技術庁での会議や説明会などで今週いっぱいは留守なのよ」
 「ひゃー。聞いてるだけで頭が痛くなる。何の会議なんだろうな。聞いてもわからないだろうけど。」
 「隼人君は対外的な事でも何でも出来るから、お父様はこれ幸いと、全部押し付けちゃったのよ。」
以前はやむを得ず、早乙女が対応していたが、必要最小限の説明で納得させようと喧嘩腰だった。敵が目の前に居るのならともかく、平和になってしまえば、きちんと折り目のついた説明や、丁寧な応対がなければとても政府や他の機関とうまくやっていけない。そんなお付き合いが大嫌いな早乙女は、すべて隼人に押し付けて、自分は研究一筋に打ち込むことにしたようだ。
 たとえ、内面は冷血で、冷酷で、狂気を秘めていても、それを表に出さず、穏やかな物腰と正確な知識、加えて気品のある隼人は他の機関の関係者や担当者から、ひどく好かれ、頼りにされていた。

 それが先週のことだ。今週に入ってもまだ隼人は戻らない。会議が長引いているようだ。今どこにいるのか、リョウにはわからない。あちこち飛び回っているらしい。政界とか、財界とかのエライさんの所だと聞いているが。それでも、研究所のデーター確認とか、その他の必要なことは電子メールなどで連絡指示が来るらしく、所員たちは多少の不便で済んでいるらしい。それがまた、リョウには腹立たしい。何故だと問われても答えようがないから、ますます、だんまりむっつりである。
 夕方、訓練を終えて食事をして、風呂に入って、普段なら弁慶や他の候補生たちと酒を飲んで馬鹿話もするのだが、それも乗り気になれず、リョウは部屋に向かった。自分の部屋のドアを開けようとして、ふと、隣の隼人の部屋を見る。最近は、研究所に居てさえ自分に与えられたオフイスにいることが多く、研究が忙しくなるとそのまま泊まることも珍しくない。確かに今は戦いもなく、パイロットとして隼人の力が必要なわけではない。それよりも、研究や会議や、そのほか隼人でなければ、と皆に頼りにされる仕事をするほうが大切なのは判る。わかるが・・・・
 『なんだかなあ・・・・』
 リョウはちょっとさみしかった。自分はほんの小さな頃から父親に、強くなれの一言だけで鍛えられ、育てられてきた
血のにじむような鍛錬を繰り返し、確かに強くなった。他の人間とはくらべものにならない程に。そして、その強さを思う存分発揮できる場所も見つけた。ゲッターのパイロットに選ばれたことは人類にとっても幸運だったが、リョウ自身にとっても幸いだったといえる。友人どころか、ろくに他人と付き合ったことのないリョウが、真に仲間というべき人間に出会うことができたのだから。
 親友
真友、心友。言い表すのに、どれをとっても足りないくらい大切な仲間だ。自分の命は相手の命だし、相手の想いは自分の想いだった。戦いの最中、これが最後かと覚悟したことは多々あるが、恐れを感じたことは一度もなかった。
 戦いが終わって、別に自分の居場所がなくなったわけではない。皆変わらず自分を必要としてくれるし、自分もみんなといると楽しい。
 それでも。
 ゆっくり頭を振ると大きな息をついた。ドアの取っ手を引く。そのとき
  「 何、らしくないため息なぞついているんだ?」
 思わず飛び上がりそうになった。振り向くと、スーツケースを下げた隼人が立っていた.

 「隼人!」
 
何しているんだ。さっきから見てると黙って突っ立ったまま」
 「えっ、ずっと見ていたのか。」 少々恥ずかしい。
 「ずっと、ってわけじゃないけどな。声をかけようと思ったら、珍しく深刻そうな顔していたからな。何かあったのか?」
 「い、いや、なんでもない。いつ、帰ったんだ?」
 「1時間ほど前だ。先に早乙女博士に会って、話をしてきた。」
 自分の部屋のドアに手をかけ、
 「立ち話もなんだ。中に入らないか?」
 「あ、ああ。」
 隼人は部屋の灯りのスイッチをいれた。隼人の部屋はいつもきちんと整理整頓されている。チリひとつどころか、机の上にも何も置かれていない_。チェックインしたてのホテルの部屋のように。無機質な部屋。それでも主が戻るとそれなりに落ち着いてみえるから不思議だ。
 「何か、飲むか?」  上着を脱いでハンガーにかけながら問う。
 「何かって、お前のところには水かお茶しかないだろが。」
 部屋の隅にある、それこそホテルの備え付けのような小さな冷蔵庫を開けると、いくつかのペットボトルがあった。
 「えーと、水とお茶とウーロン茶と、ジャスミン茶ってなんだ?」
 「花の香りのお茶だ。お前好みではないだろう。」
 「お前にも似合わないと思うけど。なんだってこんなもの?」
 「ミチルさんがくれたんだ。それをくれ。」
 隼人にジャスミン茶のペットボトルを投げると、リョウはウーロン茶をとった。
 「今回の出張は長かったんだな。日程が延びたらしいけど、むずかしい話だったのか?」
 ベットに腰を掛け尋ねる。
 「前半は復興についてだったんだがな。」 椅子にすわりくつろいだようすで。
 「後半、ちょっと意見が分かれてモメてな。」
 今後の研究所の指針、というところで2つの意見に分かれた。軍事施設として、日本の軍備に重点を置くべきだ、という意見と、いや、もう敵はいない。これからは、各国に負けぬよう宇宙開発に力を注ぐべきだ、という意見。もともとゲッターロボは宇宙開発を念頭にいれていたから、初心に帰るべきだというものだ。
 アメリカや中国に負けたくない、というのが本音だろう。それでも、予想できなかった敵への対応を重点にいれていたからこそ、今の日本が、世界が無事なんだという意見。どちらも譲らず、会議は長引いた。
 「そんなこと言っても、恐竜帝国はともかく、百鬼なんて気配もなかったんだぜ。次に敵が来るかどうか、誰にもわかんねえじゃねえか。」
 「そのとおりだがな。国から予算をもらっている以上、相手を納得させないとな。」
 「研究所の予算って、全部、国からなのか?」
 だとすれば、国の方針がすべてを決めるのだろうか。
 「半分はな。あとの半分のうち、4分の3は早乙女博士の個人的な特許料等の資産からだ。」
 「残りの4分の1は?」
 「俺の特許料等だ。」
 「お前のだって?」
 「俺も研究所にきて、少し勉強したからな。いくつか特許を持っている。たいしたものではないが。俺は研究所か早乙女博士の名義にしてよかったんだが、博士が、俺個人にしておいた方が、国から何か言われたとき離せていいだろうってな。ま、たかが8分の1にしかならないけどな。」
 平然と言って、ジャスミン茶を飲んでいる。いくら8分の1といったって、予算がどれほど巨額か、リョウにだってなんとなくわかる。300人の所員の給料と研究費、設備費、資材費等etc・・・いくらエネルギーはゲッターエネルギーでタダ同然だろうと、ゲッター合金はゲッター試作品をリサイクルしていようと。
 「そういうことで、妥協案が出たんだ。」
 「妥協案?」
 「ああ。とりあえず、今までどおり、ゲッター線計画は続ける。そのほかに宇宙開発も進行させる。」
 「そんな欲張りな事できるのか?」
 誰の案なのか、なんとなくわかるような。欲張りで、強引で、それでも納得させられるような案って。
 「ゲッターロボはもともと宇宙開発用だ。やろうと思えばさっさと月に行って、岩を削ったり、採取したり、簡単な建物ぐらいだって組み立てられる。外側ぐらいな。水や空気、その他の生活に必要なものや補充がむずかしいんだ。だから、大型の宇宙船、スペースシャトルにも宇宙ステーションにもなる物を作る。地球で作って月にもって行けば一番手っ取り早い。水や空気の問題も解決だ。
 研究所は早乙女博士を中心としてゲッターロボGを基に新しいゲッターロボとゲッター線の開発、研究に力を注ぐ。月のほうは俺が主になる。旧ゲッターを使うつもりだ。戦闘ではないから充分だ。
 大型移動基地の建造は研究所でやるが、今しばらくは準備段階だ。財界のほうとも話を進めていく。ただ、政府としては日本も宇宙開発に積極的だということをすぐにでも世界に示したい。大型基地は時間がかかるにせよ、とりあえず月に実績が欲しいところだ。NASAと協力して、月面調査を行う。旧ゲッターは月面作業車なんかよりずっと役に立つからな。ギブアンドテイクだ。俺は2ヶ月後からNASAに行く。博士がその前に必要な博士号をいくつか取得しておいたほうが、他のメンバーと釣り合いがとれていいだろうと言うので、さ来週からMCT(マサチューセッツ工科大学)へ行くよ
あちらは飛び級できるし、まあ、時間の都合が心配だが、向こうにいる間になんとかしようと思っている。
 研究所のほうはゲッターロボGにまかせることになるが、リョウ、これはお前に頼む。かなり大変だろうががんばってくれ。」
 「えっ、ああ、わかった。まかせてくれ。」
 目の前にいるのにすごく遠い。そんな寂しいような、むなしいような、いつもの自分にはない感情が、少しつらい。いつになく、優しそうな目をしている隼人。こんなときは、俺も笑ってやるもんだよな。
 「研究所は心配ない。まかせろ。お前が月に行ったら、俺たちは十五夜には酒を飲んで月見をしよう。うさぎのもちつきならぬ、ゲッター2の穴掘りだな。」
 あはは、と笑う。自分でも白々しい響きにしか聞こえないが、仕方ない。おい、隼人。そんな顔して突っ込むなよ。下手なジョークだとはわかっているさ。
 「何言ってるんだ、リョウ?」
 不審そうに問う。まじめな顔で。
 「お前も月にいるのに、なんで研究所で月見なんかできるんだ?」
 「ええっ?」
 驚きに目を見張る。
 「だって、隼人。おまえ、俺にゲッターロボGを頼むって。」
 「ゲッターに乗れる、パイロットの訓練を頼むって言ったんだ。」
 呆れたように隼人が言う。
 「俺は月に行ったら、司令の仕事と雑用で手一杯で(同じレベルの仕事か?)、おまえが1号機に乗るとき、必ずしも2号機に乗れるとは限らないが。」
 当然の顔で続ける。
 「俺が2号機に乗るときは、1号機はお前だ。ほかに誰がいるっていうんだ?」
 「そ、そりゃ、俺しかいないだろうが、・・・ちょっと、自分勝手なセリフも入ってなかったか?」
 「あたりまえだ。俺は疑い深いんだ。信用できない奴に、俺の命を預けられるものか。」
 正直でいい、といえばそうなんだが。
 「じゃあ俺は?俺は2号機が誰でもいいのか?」
 「おまえなら、最悪ゲッターが爆破しても、それなりの怪我ですむだろうな。」
 どこにそんな根拠があるんだ?おれだって、1度死にかけてるんだが。それなりって、死なない程度ってか?
でも何だか嬉しい。最近のモヤモヤしたものが一気に霧散していくのがわかった。変な奴だな、と苦笑している隼人をおもいきり、どつきたくなった。でも止めておこう。それよりも。
 「おい、隼人。俺の部屋へいこう。こんな茶じゃなくてビールがある。一緒に飲もうぜ!!」
 立ち上がり、腕をひくリョウに
 「お前の部屋か・・・座る場所あるのか?掃除、しているか?」
 「いいから、いいから。そのへんのもの、押しやれば座れるさ。さあ、早く!」
 ドアを開け、廊下に出たときちょうど弁慶が歩いてきた。
 「おい、弁慶!」
 「ああ、リョウ。どうしたんだ。もう部屋に戻っていたのか・・・・あれ、隼人。帰っていたのか。」
 ひさしぶりに嬉しそうな顔のリョウと、部屋から引っ張りだされる隼人を見て、『ああ、そうか。』となんとなくうなづく弁慶だった。
 「弁慶、今から俺の部屋で、隼人も一緒に酒を飲もうといってるんだ。お前も何か食い物持って来いよ。飲もうぜ。」
 「弁慶も来たなら、やはり俺の部屋にしよう。リョウ、酒を持って来いよ。俺の部屋にも、洋酒ならすこしはある。」

 リョウは酒に強くて、普段はめったに赤くならないのに、今夜は頬が赤く染まっている。弁慶はまっ赤だ。隼人は眼のフチが少し赤くなる程度。
 「おい、隼人。お前、何飲んでるんだ?」  楽しくって仕方ない、いう様子のリョウに
 「ジンだ。」
 「へぇー、ジンね。ジン、ジンと・・・」
 「おい、リョウ、くだらないシャレ、いうんじゃねえぞー」
 弁慶が先制する。やたら、にたにた笑っている。
 「シャレを考えてるんじゃねえよ。確か、前におもしろいこと聞いたんだ。えっと、たしか・・・・そうだ、ジンって魔物って意味あるんだ。イスラム教でだっけ。神と魔物が同じ呼び名だってのがおもしろくてさ。『似て非なるもの』っていってな。同じことばで、まったく違うものをいうらしい。」
 「へえー、リョウにしちゃ、博学じゃねえか。」
 「だろ?んで、全く違うかというと、ある意味どちらも同じなんだよな、これが。」
 「どう同じなんだよォ、ヒック。」
 「普通は神を信じるが、悪魔崇拝のやつだっている。そいつらにとっちゃ魔物が神だ。どちらも人間をはるかに超える力を持っていて、どちらも、機嫌を損ねると容赦してくれないし。
 まったく正反対に思えるが、同じもの。ヒョウリイッタイ、というらしい。」
 「今度は四字熟語か?リョウ、どうしたんだあ。熱でもあるんじゃねえか?」
 「うるせえ、で、ここだ。ここに、もうひとつ、おなじものがある。」
 「なんだあ?」
 「隼人だよ。性格はもう、おんなじじゃねえか。それでもって、名前は『神』」
 「そいつはいいや。まったくだ。」
 「なっ!」
 2人して大笑いしている。
 「やれやれ、酔っ払いが。」
 苦笑しているような、ちょっと戸惑っているような顔で隼人が言う。
 『神と魔物は表裏一体か・・・』  きちんと漢字で考えながら『確かに、意味深だな』と思う。
  「おい、リョウ、寝たのかあ?勝手なやつだなあ。」
 弁慶の呆れたような声。つい今までケタケタ笑っていたリョウが、腰掛けていたベットでグーグーいっている。気持ちよさそうに。
 「おい、リョウ、起きろよ。」あやすように揺する隼人に、
 「なあ、隼人。よかったら、今夜、リョウをここに泊めてやってくれないか?」
 「ん?」
 「いや、リョウの布団、持ってくるからよ。床にでも寝させてやってくれ。リョウの奴、最近、ちょっと不安定でカリカリしててよォ。きっと、戦いが終わって、自分をもてあましているんだろうと思うけど。」
 「リョウは生粋の戦士だからな。」
 「俺や他の者が充分相手になれたらいいんだけど、リョウは桁違いだからな。ひさしぶりにお前が帰ってきて、こんなに楽しそうだ。せっかく気分よく寝付いたのに、夜中に目が覚めて、夢かと思ったらかわいそうだ。」
 「ふっ、お前もリョウのお守り、大変だったな。」
 「いやー、普段はいいんだけどよォ。ちょっと拗ねると俺たちじゃな。隼人にまかせるよ。」
 頭をかきながら弁慶が言う。
 「ああ、かまわないさ。どうせ、今夜はまだデーター確認が残っている。ベットはリョウに貸しといてやるよ。」
 「えっ、まだ、仕事があるのか?飲んでて大丈夫か。」
 「これくらいならな。ゆっくり飲んでいたし。明日は一日、研究所の雑務と休息にあててある。午前中は無理だが昼から、そうだな、2時くらいには訓練に参加できるだろう。」
 「寝ていないのに大丈夫か?」
 「一晩くらい平気さ。明日は早く寝る。」
 「リョウが喜ぶぜ。」 弁慶は大きく笑った。
 「じゃあ、今夜はもうお開きだ。」
 「片付け、手伝わなくていいか?」
 「ああ、ざっと片付けるだけにするから。おやすみ、弁慶。」
 「じゃあ、頼むよ。おやすみ。」
 弁慶が出て行って、隼人は部屋を片付け始めた。ベットのほうで「う〜ん」とリョウが寝返りをうった。布団が落ちる。
 「おいおい、困ったやつだな。」
 苦笑して布団をかけなおす隼人。その腕をしっかりと掴み、
 「・・・一緒に行こうな・・・隼人・・・」
 起きたのかと思ったが、そのまま眠ってしまっている。寝ぼけたようだ。
 隼人は小さく笑った。
 「知っているか、リョウ。離れたくないのは俺のほうだ。」
 自分の片腕を掴んでいるリョウの手に、もう片方の手を置いて、凄い笑みを浮かべた。
 
 「置き去りにされて、たまるか。」
 
 

        ******************************


ゲッター線の暴走がなかったら、早乙女研究所は宇宙開発してたんじゃないかなー。
でも、そこでインベーダーが現れて、やはり、真OVAにまっしぐら?あらら・・・
余談ですが、早乙女研究所の予算。同じダイナミック系のマジンガーでは、兜博士が自分だけで作れるくらいお金をもっていたようだし、隼人と同じくIQ300超えている「大空魔竜ガイキング」のサコン・ゲンは小国の国家予算並の資金を持って、戦いに参加したらしいから、早乙女博士や隼人も資金繰りにはあまり苦労しなかったと思うけど。 隼人の特許はなんでしょう。元気にせがまれた、ゲームソフトもあったりして。


              今回もお付き合いくださいましてありがとうございます。

                                        2004.6.6