ゲッター日記 4







 「ねぇ、ねぇ、リョウさん!パワースポットって知ってる!?」
 夏休みもあとわずかを残すばかり。まだまだ暑さは厳しいとはいえ、浅間山の中腹にある早乙女家では朝昼はかなり過ごしやすい。解放感溢れるリビングで、元気の未だ片付かない夏休みの宿題を手伝っているリョウと、自分の宿題に大汗をかいているムサシ。そしてただ同じ部屋に居る、というだけで、ひとりPCをいじっているハヤト。 
 「パワースポットってあれだろ、元気ちゃん。 その場にいるだけで精神的な力がみなぎったり、リラックスできたりする場所 のこと。 自然が豊かな場所や霊験あらたかな神社に行くと身が引き締まる感じがするっていう・・・・」
 「うん、そう!この近くにもあるって知ってる!?」
 目をキラキラさせながら問いかける。
 「いや・・・・・そりゃ浅間山は古くから信仰の対象になっている山だから、パワースポットくらいあるだろうけど。あまり聞いたことないなあ。みんなはどうだ?」
 「おいらは知らないなあ。なに、元気ちゃん、どこか知ってるのか?」
 宿題に飽きたムサシがさっそく喰いついた。
 「うん、学校でね、うわさになっているんだよ!」
 「へえ、どんな?」
 「おい、ムサシ。お前も元気ちゃんもずいぶん宿題が残っているんだぞ。今日のノルマを済ませてからにしろ。」
 「かたいこと言うなよリョウ、ちょっと休憩ぐらいいいだろ?そのほうが気分転換出来てはかどるっていうじゃないか。」
 「おまえは気分転換が多すぎるんだよ!宿題を片付けても、休み明けのテストの勉強だってあるんだぞ。」
 優等生のリョウが難しい顔で説教するも
 「宿題だけで充分だって!」
 ムサシが威張る。
 『宿題だけといっても、その宿題さえ間違いだらけだがな。』
 チラッと目を向けるハヤト。だが何も言わず。
 「なあに、元気。また休憩なの?!」
 ジュースやおやつを乗せたトレイを持ってミチルが入ってきた。
 「あっ、ミチルさん。おいら持ちます!」
 さっとミチルの側に走り寄りトレイを受け取る。
 「だってお姉ちゃん。」 口を尖らせながら、
 「すごいんだよ。そこの湧水を飲むと頭が良くなるって!」
 「そんなわけないでしょ。だったら頭のいい人ばかりになるじゃない。」
 「でも僕、聞いたもん。頭がすっきりしてどんどん勉強出来るって。それにその水で顔を洗ったら肌がすべすべになるって!」
 「えッ、お肌が?」
  こっちも喰いた。
 「ふ〜ん。頭が良くなるっていうのは眉唾ものだけど、スッキリするというのはアリかなあ。肌がスベスベになるっていうのも、水質がいいってことなのかもな。」
 リョウがおやつを手にしながら口を挟む。
 「そうね、それならわかるわ!」
 「いやあ、ミチルさんならそんな水使わなくても、お肌すべすべですよ!!」
 ここぞとばかりに褒めるムサシ。
 「ありがと。でも確かに最近日差しが強くて、お肌が荒れ気味なのよねぇ。まだまだ紫外線も強いし。」
 「だったらミチルさん、おいらと一緒に出かけませんか!そのパワースポットとやらに!」
 「おい、ムサシ。おまえ、宿題があるだろ!だったら俺が一緒に・・・」
 「何だとリョウ!抜け駆けする気か!!」
 鬼の形相で詰め寄るムサシ。
 「違うぞ、俺はお前の宿題を。」
 「宿題なんてどうでもいいさ!」 
 「そういうわけにはいかないわ、ムサシ君。」
 「え、ええ、ミチルさん〜〜〜」
 情けない表情で崩れるムサシ。
 「別に今日じゃなくてもいいでしょ。ぼく、一生懸命宿題するからさ、ムサシさんも頑張ろうよ!」
 「げ、元気ちゃん〜〜」
 嬉し泣きのムサシに、
 「じゃあ、さっさと終わらせるぞ。ハヤト、おまえもムサシの宿題見てやってくれよ。」
 頼まれたハヤトは
 「いや、俺が見ると、かえって終わらないだろう。」 
 そう言うと部屋を出て行った。確かに、間違いを正していたらいつになっても終わるまい。これもアイツなりの優しさかもしれないと、リョウは思う・・・・ことにした。



三日後。
なんとか、曲りなりにもノートの空白を埋めた二人。ヨレヨレになっってはいたが、偉いものだとリョウは感心した。パワースポットに行く前にパワーを貰ったか?だったらもう行く必要無いようにも思えるが。
 ムサシと元気は大はしゃぎだ。お弁当とおやつは持っていかなきゃとか、二人であれこれ相談している。例の水とやらは月の光を受けたものでなければならないようで、今夜は曇りだから、明日の夜にしようと言っている。買い出しのついでにその近くまで行って来ると言う。まあ、夜に知らないところに行くのは危険だから、下調べしたほうがいいだろう。それにしてもマメなことだ。
 でも、元気ちゃんはこの夏、海水浴に一回しか行けなかったから、明日、楽しんでくれたらいい。

 「ハヤト、お前も明日いっしょに来るだろ?」
 「いや、俺は行かん。」
 ・・・・・コイツは・・・・いつもいつも・・・・
 不機嫌が顔に出ていたのだろう、普段は説明を省くハヤトが珍しく
 「明日、姉貴が帰ってくる。成田まで迎えに来いと言われてな。」
 「明日香さんが?急だな。」
 「おふくろの墓参りだ。」
 「あ・・・・・」
 そうだ、確かハヤトの母親は・・・・・
 「あら、ハヤト君。明日香さんがいらっしゃるの?私、前に頂いたドレスのお礼を言わなくちゃ。」
 紅茶を持って来たミチルが言う。
 「いや?もうとっくにお礼の電話してくれているから、いいさ。」
 「そうはいかないわ。あの時のドレス、凄く素敵だったもの!皆に褒められたのよ!もうみんな、羨ましがってて大変だったんだから!!」


 集まっていた令嬢方。皆それぞれ美しい装いだったが。
 ミチルに向ける、眼差しは。
 好意よりも嫉妬の情で。

 『なんて素敵なお召し物ですこと。』
 『どちらで誂えられましたの?』
 『まぁ!明日香様の!?あの方、まだまだお勉強中だとかおっしゃって、お願いしても作っては下さらないのに!!』
 『ハヤト様が明日香様以外の方をエスコートなさるのを、見るのは初めてですわ!』
 『お父様の早乙女博士のことはよくお聞きしていますわ。是非、お友達になりましょうね、ミチル様。』
 『あら、響子さま、抜け駆けは感心しませんことよ。よろしくね、ミチル様。わたくし、桂川美奈子と申しますの。ハヤト様のお父様とは、父が親しくさせていただいておりますのよ。』
 『あら、美奈子様、どなたが抜け駆けですの!?』

     内容はともかくvv   
     その日の主役はミチルだった。
 

 「単にモデルが良かっただけさ。」
 「まv」
 さらりと褒めたハヤトと、ポッと顔を赤らめるミチル。おいおい、なんか俺、お邪魔虫のような・・・・・
 ちょっと気まずいリョウ。(笑)
 「ところでリョウ、そのパワースポットってどこなんだ?」
 「ああ、研究所の裏側の森の中らしいんだけど。なんでも古い洋館があって、その側の小道を行ったところに岩があって、湧水が出ているとか・・・・・」
 「まあ、もしかして、人の家の庭とかじゃないんでしょうね。」
 「さあ。でも、あんなとこに人が住んでいるとは聞かないし、私有地だとしても、もうずっと前に放置された家なんじゃないかな。湧水をもらうぐらいいいだろう。」
 「そうね。このあたりは恐竜帝国との戦闘のせいで、立ち入り禁止区域ですものね。」 
  (浅間山学園は離れているんだろうねぇ。)
 リョウとミチルの会話を耳にしながら、ハヤトはゆっくり紅茶を口にする。
  ”気に入らねえな” は発動せずv 
 
 
         

        ☆


 
 鬱蒼とした森。
 月の光だけが頼りの小道。
 
 車が通る道路から少し外れ、オートバイは置いておく。
 人がやっと通れる道を4人と一匹(ロボ)が進む。
 「おい、ムサシ、本当にこの道でいいのか?」
 リョウが難しい顔で聞く。
 「おうよ!ちゃんと昼間、確かめといたから大丈夫だ!もうすこしだぞ!」
 元気よくムサシが応える。
 「でも、なんか、パワースポットというより、心霊スポットみたい・・・・・」
 ミチルが心細げに言う。
 「お姉ちゃん、オバケ、怖いもんね!」
 元気が嬉しそうに笑う。
 「な、なによ!怖がってなんかいないわ!」
 「大丈夫ですよ、ミチルさん。オイラが絶対にミチルさんを守りますから!!」
 ムサシが胸をドンと叩く。
 「怖いんじゃないわ!ただ、気味が悪いって言ってるだけで・・・・」
 「もうそろそろなんだろ?さっさと水を汲んで帰ろう。」
  むくれるミチルに、リョウが先を促す。
  わん、わん、わん。
 急にロボが吠えだしたと思うと、一目散に駆けて行った。
 「おい、ロボ!何処へ行くんだ!戻ってこい!!」
 慌ててリョウが叫ぶも、あっという間にロボの姿は見えなくなった。
 「おい、待てって!こっちか!?」
 月明かりはあるとはいえ、木々に埋もれた不慣れな道。
 4人が必死で駆けて行くと、ぽっかり空いた空間。
 そこには古い洋館が、月の光を背に、黒々とした影を落としていた。
 びっしりと蔦を纏わりつかせた洋館。窓には鉄格子が嵌められ、蝶番は錆付いている。
 思わず4人とも息を詰めて立ち尽くす。
 「・・・ここは・・・・」 
 絞り出すようなリョウの声に、我に返ったかのように
 「あ、ここだ、こ・この洋館の横の道を・・・・」
 昼間、道を確かめに来たムサシがどぎまぎ答えた。
 「じゃ、じゃあ、早く湧水の所へ行きましょう!」
 ミチルがせっつく。
 「う、うん。」
 リョウがぎこちなく洋館から目を離す。と。
 「わん、わん、わん!!」
 ロボのl声が館の中から聞こえる。
 「え、中に入ったのか!?、」
 「で、でもどうして?玄関には鎖が!」
 「お姉ちゃん、あそこ!あそこの窓が開いてるよ!」
 元気が指を指す方を見るとガラスの割れた窓がある。
 「ロボのやつ、あそこから入ったのか!」
 「リョウ、とにかく中に入ろうぜ!」
 ムサシと元気が駆けだす。
 「お、おい待てよ!他人の家だぞ!」
 「やだ、ちょっと待ってよ、みんな!」
 あわててリョウとミチルも追いかけて行く。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 古びた洋館は、もう何年も人が住んでないようで。
 リビングの家具はそれなりに重厚そうなものであったし、調度品も雑然とではあるが置かれている。
 階段下には鎧兜を身に付けた騎士が置かれていた。
 「な、なんか気味が悪いわね・・・・」
  ミチルがおっかなびっくりといったふうにリョウの背中から顔を覗かせる。
 「ミチルさん!おいらのほうに来てください!おいら、絶対ミチルさんをお守りしますよ!!」
 ムサシが鼻息荒く言い切った。
 「それよりもロボだ。早く見つけてここを出るぞ。おーい、ロボ!!」
  ワン。ワンワン!
 上の方で声がする。
 「二階か?」
 ゆっくり階段を上る。踊り場の壁に一枚の絵が掛けられている。
 鈍い金縁の大きな絵。ここに住んでいた家族の肖像画だろうか。厳めしい男性と優しげな夫人。やんちゃそうな男の子と、その妹だろうか、愛くるしい顔をした巻き毛の女の子。
 「この家の家族かな。幸せそうな絵だな。」
 振り向いたリョウの言葉にミチルも駆け寄ってきて。
 「え?リョウ君、これが幸せそうなの?」
 「は?」
 どこか怯えたようなミチルの言葉に、リョウは絵に目を向ける。
 「え!ええっ!!そんなバカな!」
 再び目にした絵は。
 教会を背にした墓地で、傾きかけた4本の十字架が描かれていた。
 「バカな!?さっきは確かに!」
 思わず額縁を手にして揺するも、暗い絵に変化はない。
 「うわぁ!!」 
 「どうした、ムサシ!!」
 まだ階段の下に居たムサシが、震える指で騎士を指す。
 「い、今、コイツの目が動いた!!」
 「ええ?!」
 降りようとした時、
 ”バターンン!!”
 「きゃあ!!」
 おもわずミチルはリョウにしがみ付く。
 「さっき開けたドアが閉まっちゃったよぉ!!」
 泣きそうな元気。
 「は、早く出ましょう!!」
 「ああ。おい、ロボ、来い!!早く!」
 叫ぶも二階からロボは来ない。
 「急いで行って来る。ミチルさんは元気ちゃんとここにいてくれ。ムサシ、行くぞ!」
 「え、あ、おいらもか?」
 「いやよ、怖いわ。みんなで行って、すぐ戻りましょうよ!」
 「そ、そですね、ミチルさん。お、おいらの後ろについて来てください。」
  「ロボ!ロボ!」
 リョウを先頭に4人はおそるおそる二階に上がった。
 「こ、こっちだよ、リョウさん。」
 元気が奥の部屋を指差す。
 「そ、そうか。みんな気をつけろよ。」
 じりじりと奥の部屋に進む。
 少しだけ開いたドア。
 4人が顔を合わせ頷きあい、一気にドアを開く。
 「ロボ!」
 そこにいたロボは、何かを一生懸命食べていたが、リョウの声に振り向くと。
 真っ赤な口を開け、吠えて飛びついて来た!
 「う、うわあ!!」
 リョウは咄嗟に背中を反らして避け、ミチルと元気を庇う。
 「ムサシ、戻るぞ!二人を頼む!」
 叫ぶと手近にあった棒を掴む。
 「わん、わん、わん!!」
 振り払おうとする前に、ロボのしっぽが激しく振られているのに気付く。
 「え?」
 「わん!わん!」
 いつもにように飛び付くロボ。
 疑問符が頭に飛び交うが、急に家が揺れ出した。
 「とにかく外だ!!来い、ロボ!」
 慌てて廊下を走り、階段を駆け降りる。
 「早く、早く、リョウ君!」
 窓の外からミチル叫ぶ。
 揺れはますます強くなってきた。
 「走れ!走れ!!」
 4人と一匹は夢中で走る。
 後ろから『ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴォ!!!!』と、凄まじいとどろきと大地が揺れる。
 やっと、オートバイを置いた道に出る。
 「・・・はぁはぁはぁ・・・・・・」
 しばらく誰も言葉を発することが出来ない。
 「・・・・・・・・」
 わんわん、わん!
 4人ともビクッとロボを見る。ロボは嬉しそうに尻尾を振っている。だが、その口は血塗られたように真っ赤で・・・・・・・ 
 うっすら甘い匂いがした。
 「え?」
 ミチルが戸惑ったようにロボに顔を近づけた。
 「・・・・・・・・何これ・・・・・・」
 自分の口の周りをペロペロ舐めているロボ。甘い匂いは、大好物の犬用ケーキのクリーム。(犬に匂いのキツイものはダメっていうのは、おいといて。)
 「どういうこと?」 
 ポツリとつぶやくミチル。
 クリームを舐め終わったロボは、ムサシにまとわりつく。
 「・・・おい、ムサシ。おまえ、ひょっとして。」
 「えっ、え!?おいら、なんにも知らないぞ。」
 キョロキョロと目が動く、挙動不審のムサシと元気。
 「ムサシくん、元気〜〜〜」
 ミチルの目が吊上がっていく。
 「ごめんなさい、おねえちゃん!!」
 普段から怒られっ子の元気があっさりと白状する。
 「前に友達と虫取りに来てさ!こんなところにオバケが出るんだぞ~~って。で、おねえちゃんを驚かそうとおもって、昼間、あれこれ仕掛けて・・・・ムサシさんにも手伝ってもらって・・・・」
 「い、いや、おいらは、その、ちょっと・・・・・元気ちゃんの夏休みの日記に書ければ、とか。あの、その・・・・」 
 ムサシの場合は100パーセント、ミチルにいいカッコ見せたいだけだろう。
 リョウもミチルも全力で逃げたので、くたびれて怒る気力もなくなかったし、まぁ、怪談なんて夏の風物詩だから良しとしよう。
 「まったく、くだらないこと考えたな。」
 「ほんと、。もう、くたびれちゃったじゃない。」
 苦笑する二人に、ムサシと元気もほっとする。
 「しかしムサシ。なかなか凝った演出したんだな。あの絵の一瞬の交換は種がわからないぞ。騎士の目はお前が嘘をついただけだろうが。
 そして、ロボの好きなケーキを家の二階に置いといたんだな。ロボが入っていって、それを俺達が追いかけるように。だから元気ちゃん、ロボのいる部屋がすぐわかったし、あそこで気付くべきだったな。」
 「クリームには食紅を使ったのね。こういうことには頭を使うんだから!」
 「部屋をガタガタいわせたり、地響きおこしたり。種明かししろよ。凄いものだったぞ!」
 安心したせいで、二人ともにこにこしている。
 褒められたムサシは元気と顔を見合わせ
 「それが・・・・・・オイラ達がやったのは、ロボのケーキぐらいなんだ・・・・」
 「え?」
 「ぼくたちは、ほかには廊下におもちゃのヘビトカゲ置いたり、水の入ったゴムのホース仕掛けたり・・・・・・」
 「・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・」
 ピカッ!!
 「きゃあ!」
 「「「うわぁ!!」」」
 眩い光が急にあたりを覆った。
 「ツッ・・・・!
 思わず手で光を遮る。
 「おい。」
 目が慣れて。
 ジープのヘッドライト。運転席から身を乗り出しているのはハヤトだ。
 「ハヤト!」
 「ハヤト君、どうしてここに!?」
 「姉貴が今日は軽井沢に泊まって、墓参りは明日にすると言うからな。戻ってきた。ちょっと気になることがあったから。」
 「気になること?」
 「お前達、変わったことはなかったか?」
 「そ、そうなんだ。聞いてくれよハヤト。ムサシと元気ちゃんが、俺達を怖がらせようとした洋館が、もしかしたら本当の心霊スポットかもしれないんだ。」
 「そうよ、ハヤトさん。とっても怖かったんだから!もう私、オバケ屋敷には入れないわ!」
 「この近くの洋館って言ったな。」
 「ああ、この先を行ったところだ。」
 「この近くに洋館なんて無いぞ。」
 「へぇ・・・・・は?」
 「え?」
 「俺はたまにこっちの道を通るんだが、このあたりで家なんぞ見かけたことはない。」
 「う、ウソだろ!」
 4人、引き攣る。
 「あの洋館は木々に埋もれてるから、見えなかっただけじゃないのか?」
 「そういうことにしておいてもいいが。」
 「おい!」
 ハヤト以外全員が顔を見合わせる。
 「どうする、リョウ・・・・」
  おっかなびっくりのムサシ。
 「どうって・・・このままじゃ帰れないさ。もう一度見に行こう。」
 「ええ!!もう一度?行きたくないよ!」 
 「今度はハヤトもいるし(?)。嫌ならムサシ、ここでミチルさんと元気ちゃんを見ててくれ。」
 「私は行くわ!このままじゃ、眠れない。」
 「ミチルさんが行くならおいらだって!ミチルさんを守らなきゃ!」
 「じゃあ、みんなで行くぞ。いいな、ハヤト。」
 「かまわないが・・・・・・・」(行った方が眠れないかもな・・・・)

 今度は5人が無言で歩く。葉を揺らす風にもびくびくしながら。そして。
 森の中、ぽっかり空いた土地が。
 月の光を受けて明るいその土地は、焦げたようにところどころが黒く。辺りに散らばる朽ちかけた材木も焦げているようで。
 「・・・・・・数十年前に、この森で火事があったと聞いたな。夫婦と二人の子供が犠牲になったとか・・・・・」
 ボソッと呟くハヤト。全員、一瞬息を止め。

 「「「「「うわぁあああああああああああ!!!」」」」






          ☆









 「じゃあ、ミチルさん。またね。昨日は楽しかったわ。母のお墓参りにも付き合ってくれてありがとう。」
 「いいえ、とんでもないです!私の方こそすっかりご馳走になってしまって!」
 「リョウ君の手の怪我、早く治るといいわね。」
 「ええ。ちょっと捻っただけっていってましたから、すぐ治ると思います。」
 「そう、よかったわ。」
 「じゃ、ミチルさん。姉貴を送って来る。」
 「気をつけてね、ハヤト君!」  



 
 オープンカーの赤い車は、高原の爽やかな風の中、滑るように走る。
 「うふふ。」 
 「なんだよ、姉さん。」
 「ミチルさんがいないのだから、貴方の悪戯(いたずら)聞かせてもらおうと思って。」
 「別に悪戯なんてしていないさ。」 憮然とハヤト。
 「でも、隠し事はしているでしょう。」
 楽しげに笑っている。
 「・・・・・・・・・・」
 風が心地よい。
 フッとため息つく。
 「かなわないな。今回、俺はなにもしていないさ。ただ、あれは敷島博士の家なんだ。」
 「まあ。」
 「侵入者対策として過激な攻撃用の仕掛けがどっさりと、防御用に家自体が地下格納式になっている。元気ちゃんとムサシがコソコソ話してたから、怪我をしないようにほとんどの攻撃スイッチは切っておいた。まぁ、リョウがちょっと手首を捻ったのは誤算だったけどな。」
 

          (誤算・・・・・・・・ね?)

        拍手お礼に続くv

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 ガラダマ様  43500番リクエスト

 お題は     「なんちゃって怪談噺」

         オチが博士の失敗とか元気ちゃんのいたずらとかでv


 ありがとうございます!!久々のきり番リクエスト、うれしいです!(もちろん、どんなリクエストも嬉しいです!
 しかし、う〜〜ん。もうちょっとマシなの書けよな、自分!
  精進しますので、またリクエストお願いしますね!


            (2013.8.31    かるら)