閑話    ゲッターロボアーク14話
                                      ( アニメオリジナル)    


      それぞれの・・・・・・・


         

            
     
                             ☆





 淡い緑色の光が周囲に溢れている。
 隼人はつい先ほどまで操作していたコンソールに凭れて、「時」を待っていた。
 
未だかつて、これほどまでに穏やかな時間を感じたことはなかった。
 「・・・・・・・ようやく、か・・・・」
 



 地獄の釜に封印されていたドラゴンは解放した。

 カムイに銃を向けられたとき、
 避けるべきか、倒すべきか答えは出なかった。
 カムイが決断した以上、カムイは何かを異空間で見たのだろう。
 拓馬や獏が未だ戻らないことと関係があるのかもしれない
 ならば、
 今はただ、運命に任せようと。
 地球の未来も、人類の未来も、カムイ達、爬虫j人類も。
 今。自分に出来ることは、ドラゴンを解放するか閉じ込めるかだけ。
 心臓を撃たれ、落下していく身に何かができるのならば、それを。
 


 そして、現れた竜馬は言った。
        「やるべき事はわかっているはずだ。」 



     ここまで来て、俺に決めろと。
      すべてを押し付けて、決めろと。、
     人類や地球や爬虫人類の現実と未来を鑑みて、
    
   たとえ選びたくない道だとしても、選べと。




ゲッターが正義の全能神だとは思わない。
確かにゲッターが人類にとって、地球にとって
進化を促し続けてきた神に等しい存在だとは思うが。
随分と身勝手で、ややこしく、面倒な奴でもある。
意に染まぬものは当然のごとく切り捨てる。
いや、元来、神とはそんなものか。
恩恵を受けるか否かで魔と代わる。

単にゲッターは我武者羅に、生き続けることに貪欲なのだろう。
生き続けることにこそ、存在意義があるように。
それはもしかしたら宇宙が膨張していくがごとく、当然のことなのかもしれない。
だとすれば、
宇宙の膨張? 自分たちの文化や歴史を認めている(?)宇宙人?生命体?が、
地球人の存在のみを否定するのは可笑しなことだ。.
大義名分を翳したところで、自分たちの優性を押し付けているだけだろう。
宇宙は

.

そんな小さなものではない。


ならば。俺も遠慮なく。
まあ、今までも遠慮した覚えはないが。
運命とやらに、従うのはこれで最後だ。
.





隼人が 無・理・矢・理.。
竜馬に連れてこられた、旧早乙女研究所の職員は300名近くだった。
当初は隼人もゲッターパイロットとして、戦闘訓練のみに従事していた。
訓練、訓練、訓練。
運動神経はもちろん、反射神経・身体能力にも恵まれた竜馬と隼人。.
反射神経は二人に劣るものの、.打たれ強さにかけては二人に飽きられるほどの武蔵。
ゲッターロボの操縦と3人の息の合わせ方に集中した。
ただ、数か月が過ぎたとき。
研究所での業務停滞が気になった。
早乙女博士は優れた科学者だが、傑出した人間によくあるように、
世俗的なもの、研究所自体の運営についてはかなり大雑把だった。
補助する職員も多く、それぞれが有能ではあったが、
早乙女博士の言葉足らずの指示や言動は、理解するのが困難なようだった。
たまたま目にした、博士と職員の対話のかみ合わせなさにイラついた隼人は
両者の言い分を正確に伝え、対処した。
そのとき、早乙女は目を見張り、職員は救いを得たかのように目を輝かせ。
それ以降、度々、やがては当然のように。
隼人は早乙女の助手になった。
意図せぬとはいえ、隼人にとっても早乙女の傍で研究に携えることは、
人よりもはるかに高いIQを持ち、それ故に人生に倦んでいた自分にとって、僥倖といえるものに違いなかった。
地球、いや宇宙を相手とする壮大なゲッター線研究。
敵と全力で戦い、かつ勝利する。
自分の持つ全て、全力で生きることにどれほど焦がれていたか
研究所に来て初めて気付かされた。
満たされなかったものが溢れてきた。
守りたいものなどひとつも無いと思い込んでいたが、
守るためなら自分の命など失っても構わないとさえ思えた。
自分に力があれば、仲間なぞいらない。仲間とは足枷でしかないと信じていたが。
仲間とは、本当は自分の力をなおも高めるものなのだと。
一人では成せない事を為せるのだと知った。.
だから思った。武蔵が一人でゲッターに乗って玉砕した時に。..自分も一緒に逝きたかったと。
だから思った。弁慶がゲッタードラゴンと融合したときも。
強く思った。宇宙から戻った時に早乙女研究所が消滅したときに。
何故だと怒った。.竜馬や號が火星に跳んだ時。..
    
      自分だけが残される意味と無常と
              憤りを


   今度こそ、俺も連れていけ。.






 
     
        淡い緑色の光の中
          陽炎のようにうごめく影

              ・・・・・・・・ゆっくりと影が収縮して、人 を形どっていく。



        ☆           ☆





「出たな!ゲッタードラゴン!!」



朦朧とした意識の中
カムイの叫び声に拓馬は後ろを振り返る。
バグよりも巨大な影、空を覆うほど。

「・・・・・こいつが研究所の地下にいたドラゴン・・・」
拓馬が呟く。
「こいつはだれが操縦してンだ?神司令か?」
「馬鹿なことを言うな!これは自分の意思で動いてるはずだ。」
拓馬の疑問に思わず口にしたカムイだが、
「いや・・・・確かに神さんもいるかもな・・・・」
致命傷を負い、しかも何十メートルも落下した隼人がドラゴンを解放したのなら、
取り込まれていないほうがおかしい。

    『拓馬、カムイ』

知らぬ声が、遠雷のようにあたりを震わす。


   『火星に行け』
   『バグは生態系無限抹消機。』 


「何を勝手なことを言ってる!私はおまえを倒し、人類を抹消しこの地球を爬虫人類のものとする、
それこそが地球と宇宙のためだ!!」
激昂するカムイ。
ドラゴンに向かって全ビームを放つ。
慌てて飛びのく拓馬。
光が収まった後、悠然と立つドラゴン。.
しかし、あたりは真っ赤に染まる。吐かれた血のように。
草木はおろか、土さえ死んでいる。
「・・・・・お前のビームは、ダーク・デス砲と同じか・・」
ぽつりと呟く拓馬。
ハッと.目を見張るカムイ。


「行くぞ!カムイ。ぼさっとしてんじゃねえ!!」
拓馬が飛び立とうとする。
「ま、待て!どこへ行く!?」
「決まってんだろ、火星だ!お前もさっさと兄貴に連絡してマシーンランドか何かで地球を脱出だ!」
「馬鹿な!地球は爬虫人類のものだ。我々は地球に住む!バグはダーク・デス砲ではない!」
「とにかく時間がねえ!翔さん、シャトルじゃ到底間に合わねえ。なんか他に火星への手段がないのかよ!」
アークの画像に翔が移る。
『各国に、宇宙航行船・タワーの出航命令を出す。各スーパーロボット船隊は護衛に付け!』
「待て、拓馬!火星に人類を行かせはしない。火星には真ゲッターロボがある。人類がなおもゲッターにしがみつくのを許しはしない。人類はここで終わるのだ!」
カムイが言葉とともにビームを放とうとしたとき、恐竜帝国からの通信が入った。
『カムイ様!ゲッター線エネルギーが急上昇中です!このままではマシンランドウ内ですら、防御不可能です!!』
「なんだと!やはりドラゴン、お前は敵だ!よくも俺を騙そうとしたな!!」
いきり立つカムイ。
『違うぞ、カムイ!』
急に獏の声が響いた。
「おい、獏!どこだ!」
「カーンの操縦席だ。カムイ、お前が放った抹消ビームは、このままでは大気圏を超えてこの太陽系まで変える。ドラゴンはゲッター線で地球を覆って 変化を閉じ込めているんだ!生命の最後の希望、火星にまで及ばないように。」
「な、なんだと・・・・」
言葉を失うカムイ。ハン博士が言っていた。

  『これは地球を、いや宇宙を創りかえる程の力だ。』と。

大気返還装置ムウならば、ゲッター線を遮り人類の生存だけを無しとした。
だが、マクドナルドから渡された武器は、爬虫人類の生存さえも拒絶するものだった。
ゲッター線で進化したのは人類だけではない。爬虫人類もまた、恐竜から進化した地球人なのだ。
アンドロメダ流国にとって、誰が地球の覇者となろうと関係ない。
地球に芽生えるすべての生命を消滅させるだけだ。

  『手荒い真似はよすのだ!それでは変わらん!変わらんぞ!』
 
叱咤したハン博士の声がよぎる。
未来で見た武蔵の狂気に充てられて、あおの未来が絶対的なものだと信じ込んだ。
生まれた時から差別、悪意に晒され続けてきたカムイ。
偏狭な思想は周りをも巻き込み憎悪となることを、思い知らされてきた。
しかし拓馬は断言する。

「あの未来は、俺たちが首を突っ込んでない未来だ。だから俺はとことん首を突っ込む!」

そう。出陣式の時引っ掻き回して、懐かしい母の手に触れさせてくれた。
あの時応援に来ていた帝国の民たちは、拓馬たちにも声を張り上げた。

 『ガンバッテ戦って来いよ~~!』
 『地球の未来のために、敵をやっつけろー!」

『カムイ!』
翔の声が響いた。
「19年前のあの日から、火星への探査は続いている。火星には地熱が高く、高濃度のガスが発生し続けている一帯も確認されている。確かに真ゲッターは火星に飛んだ。そこで何が行われたかは想像でしかないが、真ゲッターには恐竜帝国の女帝ジャテェーゴも融合されていた。 爬虫人類の安住の地を望んで戦った女帝の意思がそこにはある。」

火星に居場所はある。
借り物でもなく憐憫でもなく、邪魔者でもなく。
爬虫人類と人類が、互いに堂々と生存出来る場所が。


        二つの種が、同等の立場で始まれる星  



 
.
           ☆           ☆          ☆






 揺らめいていた影が、ようやく形どる。

「神さん!!」


「・・・・・・」

満面の笑みで駆け寄ってきたのは、どう見ても「號」だ。

いや、ここはどう考えても「竜馬」だろう!?
呆然、という感情を、隼人は初めて知る。

「いやぁ、まさかここで神さんに会えるとは思わなかったよ!」
ここ、という言葉に回りを見回す。
コンソールの前。
眼下には底知れぬ穴。おそらく深さは2000mほどあるのだろう。
ドラゴンが繭を作り眠り続けていた地下壕。
早乙女研究所?どう見てもそうだ。俺は地縛霊とやらか?では何故、號がここに?
「・・・・・元気そうだな、號。黒い.ゲッターロボに乗っていなかったか?」
あれを見ては、この號がとても敵や偽物とも思えない。
「今までゲッターに取り込まれた者は、せいぜい幻影でしか現れなかったものだが?」



「あのとき、火星に飛んだのはわかったんだ。俺たちはひとつの膨大なエネルギーで、火星の大気を、大地を変えていくのを感じた。恐竜帝国の女帝の意識も感じたよ。あいつらが憧れ続けた古代の地上への強い想い。こいつ、悪い奴じゃなかったんだと思ったっけ。」

未来も垣間見た。ゲッター軍団ってやつや、エンペラーっていうでかいの。そうそう、武蔵っていう、ちょっとアブナイような人にも
会ったよ。なんか狂信者みたいでビビったけど、流さんに言わすと仕方ないらしい。エンペラーの記憶による人造人間らしいけど、武蔵さんは恐竜帝国と凄惨な最期を遂げたらしいから。憎しみの記憶?が褪せないのだろう。
流さんととタイールは異空間に留まることにしたようだ。いろいろ思うことがあるのだろう。
俺は。
異空間や未来に興味はない。ゲッターの求めるものが何なのかとか、人類の存在意義はなんだ、宇宙が、生命が、とか。
俺は生きたかったなあ。地球、早乙女研究所で。
神さんや翔や凱たちと、単純に、思いっきり。
襲ってくる奴らをぶちのめして
守って。
過去や未来に手を出すわけにはいかないから、時間は超えない。
まだ俺の出来ること、俺が必要とされる時があるならば、その時まで待っていよう。
そして 願いを送り出してやる。

「なんて思ってたら、いつの間にか見知らぬゲッターロボに乗って、空間を割ってた。で、取り合えず敵をぶっ飛ばした!」

號の何の参考にもならない説明に、隼人は頭を抱えた。
  『 頭で考えるな、感じるんだ! 』
どこかで聞いたような気がする。高度な科学力の最果てが精神論だとしたら、研究者たちはペンを捨て、滝に打たれるだろう。
「今回はどうやって来たんだ?拓馬たちを送り出すときに消えたと思ったが。」
気をとりなおして尋ねると
「それそれ!俺も今度こそ終わりかと思ったんだけどさ、神さんの気配がしたんだ!」
「俺の気配?」
「うん、神さんも分解しかけたんじゃない?ドラゴンを解放するときにさ。」
分解しかけたというか、消滅したと思って・・・・・待て。
「俺は、影か?実体か?」
「もちろん、実体だと思うよ、俺も神さんも。」
明るく当然のように告げる號。
いや、いや。
なぜ、不思議と考えない?

「ゲッターエネルギーはさ、火星すら地球化出来るじゃないか。俺たち二人の実体化なんて軽い、軽い。」
いや、お前が軽い!と言うだろう、竜馬ならば。
いいや、あいつも当然と言うか。
「今まで、誰もそんなことはならなかったが。」
可能だったなら、どんなに良かったか。
「そこはゲッター線も進化したんじゃない?進化するエネルギーだろ。
これからも神さんに仕事してもらうためにさ。」
「仕事?今更なにを。地球は今、どうなってる?」
危急存亡の時は、翔が火星移住の指揮を執っているはずだが。
「さあ、俺も知らないよ。地上でどれだけ時間が経ったのかもわからない。たぶん俺ら、時間は飛ばないけど、止まるんだ。
地上に出てみる?」








瓦礫ばかりの世界。
バグとゲッター線に汚染され死にゆく世界。
そのなかで、壊れた肉体を機械で補いながら足掻き.、希望に縋りつく人類。

はるか上空に地球を睥睨するドラゴン。

思った以上に地球はひどい。生命の芽生える兆しもない。
融合による存続のみが許された世界。
封鎖されていた研究所は、ドラゴンの飛翔によってところどころ破壊されていたが、研究所自体が緑色の結晶で覆われていた。あの日から地球に何が起こったかは、いくつもの映像データで知れた。
全世界に残っていたすべての人類と爬虫人類を火星に移住させるには、機体も時間も無く。
それでもその限られた中で、出来る限りのことをしていた。

そして地球はゲッター線で閉ざされた。


「神さん、ドラゴンの所まで行けば、流さんと思念が繋がるかも。」
「ふん。」
隼人は鼻を鳴らす。
「今まで散々待たされて、やっと迎えに来たかと思ったらまた置き去りだ。
もう待つつもりはない。」
運命を受け入れ続けてきた男は凶悪に笑う。
「いずれドラゴンを乗っ取って、押しかけて行く。聖戦とやらを引っ掻き回してやろう。」.
それでこそ神さんだ!と號は嬉しくなる。
「俺も手伝うよ!頭を使うのは苦手だけどさ!なんだってするぜ!!」
「頭を使うのは専門家に任せるさ。嬉々としてやってくれるだろう。」
え?嬉々とする専門家って。
隼人は腕時計を外すと一枚のチップを取り出す。
なんとなく、なんとなくわかる。
「・・・・・・・・」
「ついに頭に地雷を埋め始めてな・・・・・博士の部屋には未使用の本体も、まだあるはずだ。」
まだ、ということは。
いくつもあったのか?さすが敷島博士。未来の科学、武蔵を超えていた!!


          始まりの星  地球は

                 まだ 終わらない



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ゑゐり様 50500番 リクエスト お題は
      「かるら版 ゲッターアーク最終回」


ありがとうございます!忘却の彼方、ほこりまみれのサイトにリクエストを!!
それもかるら版ですよ、かるら版!
好き勝手でいいってことですよ!(違うだろ!)

いやぁ、アニメオリジナル ゲッターアーク。
まちのぞんでいたし、内容も良かったですよ。ただね、ただね、た・だ・ね!
隼人が、隼人が、隼人がぁ~~~~涙・涙
ついでに敷島博士も。

・・・・・・復活させます。
號は無理だと思ってたけど、出てくるんですもの。実体で。じゃあ、良くない?
まぁ、未来が明るい(?)から、ネオゲの號にしました。
これから長い、長~い時間を過ごしていくので、陽気な號で。

無茶ぶりはわかってます。隼人も休ませてあげるべきかもですが、・・・・・・ヤダ!

かるらワールドではこうです!! 

    ゑゐり様。ご好意に甘えてUPさせていただきます。

     (2022.1.6     かるら)