第一回 惑星イリン  @



リョウ : 「これはアムルの星だよな。」
武蔵 : 「そうそう、『聖者の星』っていうやつ。」
弁慶 : 「な〜〜んかおっかない星だったよな。脱出出来ないなんてさ。」
リョウ : 「俺達は平気だったけどな!」
武蔵 : 「よっぽど聖者離れしてるんかなあ、俺達。」
弁慶 : 「それもちょっとどうかと考えちまうけど。ま、よかったってことで。」
       山咲がお茶を淹れながら
山咲 : 「本当にいい香りのお茶ですね。これもイリンのお茶ですか?」
武蔵 : 「いや、これはマードックの母星のお茶だよ。アムルが栽培するようになって、数倍美味くなった。」
弁慶 : 「イリンの植物は持ち出せなかったんだ。というか、イリンでは木から離れた葉や実は、半日くらいで分解されるんだと。」
山咲 : 「ええっ?!」
リョウ : 「植物だけじゃなく、人間も砂のように崩れていくんだ。死んだモノはどれも同じ無機物扱いだ。宇宙船も同じ。なんか嫌な星だぜ。」
山咲 : 「そんな・・・・・・」
          「不老不死」を与えられても、「死の尊厳」を与えられない「生」。
弁慶 : 「聖者っていうのは、欲を持たないとか妬まないとか、それに他の者を無条件に愛する人間かと思ったけど、全員が聖人っていうのはこんな冷たいものなんかなあ。」
武蔵 : 「人を喜ばせたい、それによって自分も嬉しくなるっ、ていうことすら、『欲』なんだろなあ。究極の無欲ってヤダな。」
リョウ : 「でもあの星って、わざとそういうふうに創られた星らしいぜ。」
弁慶 :  「へえ?ほんとかよ!なんで解るんだ?」
リョウ : 「隼人がアムルに星の伝承を聞いたんだ。そしたらあの星は、憎しみや苦しみから逃れたいと願った人々が、選ばれて連れて来られた星らしい。」
弁慶 : 「選ばれて、って変だな。だって、誰でもあの星には入れたんだろ?」
リョウ : 「この場合の『選ばれて』は『特別』っていう意味じゃなく、『望んだ者が』、ってことじゃねえかな。」
武蔵 : 「連れて来られたって、誰が連れて来たんだ?」
リョウ : 「そんなの決まってんじゃねえか、『神様』だ。どこの世界でも絶対者の呼び名なんてひとつさ。」
弁慶 : 「でもよう、神様っていうんだったら、もうちょっと優しさがあってもいいんじゃないか?嫌になったら脱出出来るとかさ。」
リョウ : 「ナニ言ってるんだ。神様っていうのはな、アフターケアしねえもんなんだぞ。」
       (いや、それもどうかと・・・・・)
武蔵 : 「なんか、『楽を求めた見せしめ』って感じでいやだな。」
山咲 : 「誰もが憧れる世界でしょうのに。」
アムルタート : 「ゲッターの敵の罠みたいなものだと、隼人は言ったわ。」
リョウ : 「お、アムル。水やりは終わったのか。」
アムル : 「ええ、お茶のお代わりを持ってきた。」
リョウ : 「あんがとよ。でも隼人のやつ、即座にゲッターかよ。なんでもかんでもゲッターに繋げたがるやつだな!」
アムル: 「いいえ、私もそう思う。人は感情を糧として進化する。、感情を否定するイリンは進化を否定するのと同じ。イリン人が持ちえたただ一つの感情は、生きることに飽くことだけだった。」
     「「「「・・・・・・・・・・」」」」」
     4人とも言葉を失くす。アムルの種族は1000年を単位としてただ生きていた。苦しみもなく、悲しみもなく、喜びもない。
     進化も退化も、意味もなく。
アムル: 「私はここがいい。このネオアースが、隼人の側が。」
      『ピシリ』
      哀愁を帯びた空気に亀裂が?!
弁慶 : 「あ、ああの、あの、そう、お茶を!」
     あわあわわ。地球でケイに睨まれていたのを思い出した弁慶が、間を取り持とうと焦る。
  『山咲、第5管制室に来い。』
         山咲の腕のブレスレットが鳴った。小型通信機と、紅い石が埋め込まれている。
山咲 : 「了解しました、司令。」
      すぐさま返答し、チラリと誰かに視線を向けたが、キビキビと部屋を出て行った。 
弁慶 : 「ふぅ〜〜」
武蔵 : 「な、なんかくたびれたな。」
リョウ : 「ああ。今日はここまでにするか。」 グビっとお茶を飲み干す。
弁慶 : 「じゃあ、また次回ってことで。俺達も管制室に行くか。」 
アムル : 「はい。」

            『あ、いや、その・…』  

設定についていろいろお尋ねがありましたら、web拍手等でご質問下さい。無理やりこじつけますので(笑)。