青き星にて 8
月面戦争は終わった。
本当に終わったかは・・・・・・・
誰にも解らない。
『アレ』はなんだったのだろうか。
『何処』から来たのか、『何故』月に現れたのか。
完全に消滅したのか。
何も解らなかった。
「月面開発計画」は壊滅的なまでの被害を受けた。各基地の設備や施設もさることながら、多くの優秀な人材が犠牲になった。生き残った人々は、家族や友人、恋人を失った悲しみに打ちひしがれながら地球に戻った。長く心のケアが必要だろう。
月面開発は暫くの間、凍結されることになった。開発責任者であるコーウェン博士とスティンガ―博士は、当分の間、破壊を免れた第3基地で事後処理に携わることになった。「インベーダー」と名付けられた『アレ』がなんであれ、人類の敵であったことに違いはない。これから先、万が一のためにも、研究は必要だ。
ゲッター線を吸収して巨大化し、そしてゲッター線を吸収しすぎて破裂する。なによりも、人間の自我を乗っ取るおぞましい生命体。いま、インベーダーは消滅したが、いつ、再び現れないとは限らない。唐突に。
ゲッター線は月面開発途中で発見された。その強大な力は月開発を飛躍的に推進させた。懸念だったエネルギー問題をらくらくクリアさせたのだ。二人の博士と共同研究者であった早乙女博士は、世界政府の要請でひとり地球に戻り、防衛力としてのゲッター線研究を始めた。宇宙進出における自衛力としてのロボット開発のために。
もっとも、「宇宙に出始めたばかりなのに、そんな力が必要か?」とは議論されたが、「備えあれば憂いなし」とかなんとか。未知の世界に命を賭ける人々に保険はあったほうがいいだろうと。
それが宇宙ではなく地球、地底からの恐竜帝国の攻撃を防ぐことが出来たのは僥倖だった。
今回、インベーダーを倒すことが出来たのもゲッターロボのおかげだ。早乙女研究所は引き続き、より強力なゲッターロボの開発に取り組むことになった。
☆
「おい弁慶!もうちっと早く飛べねえのか?」
「悪い、悪い。」
ムスっとしたように言う竜馬に、弁慶は頭を掻きながら謝る。
「でもリョウ、弁慶の合体速度だって基準内だぞ。」
武蔵が庇う。
「基準内だからいいってっもんじゃねえよ!俺達が最高基準持っていねえと、他のやつらの技量をカバー出来ねえ。」
「・・・・・・・・おぅ・・・」
武蔵が気まずそうに認める。
「すまん、リョウ!昼からまた頑張るよ。」
弁慶が明るく言う。
「ああ。・・・・ま、操縦しているのがジャガーだからな。ちっと遅くなるのは仕方ないと思ってるさ。ベア―ならちゃんと出来るんだし・・・・・」
素直に謝る弁慶に、リョウもちょっと言い過ぎたと小声になる。
「おいらが代わってやれるといいんだけど、おいらもジャガ―は苦手だしな・・・・・そうだ!リョウがジャガ―に乗ったらどうだ?イーグルはおいらが操縦してやるぞ。かっこいいし!!」
お目々きらきらの武蔵。
「ああ?!なに言ってやがる!」 かみつく竜馬。
「リョウならジャガーのスピードはへいちゃらだろ。俺や弁慶も自衛隊のやつと組む時はイーグル操縦するんだしよ。この際・・・・」
皆まで言わさぬリョウが武蔵を睨みつける。
「・・・・・・・冗談だ。」
それを見ながら弁慶は、昼からの訓練がきつくなりそうだな〜〜〜昼飯、軽くした方がいいかなと考える。
月面戦争で急きょゲッターロボを三体造った。研究所ではその三体を使って自衛隊から選抜されたパイロット達の訓練をしている。今のところ、ゲッターの合体時のGに耐えられる者はわずかだ。リョウがイライラしているのはそれが原因だ。自衛隊員達の訓練は、リョウ達ゲッターチームの責任だ。
ただ、それだけがイライラの原因ではあるまい。ゲッターチームは4人だ。もうひとりはここしばらく姿を見ていない。早乙女博士と一緒に研究所に籠もっているのだろう。自分達は富士の裾野の演習所で訓練を続けている。
「あれ、ミチルさん。どうしてここに?」
昼食を取ろうと入ってきた食堂に、研究所に居るはずのミチルがいた。
「みんな、久しぶり。」
明るい笑顔でミチルが迎える。
「いや〜〜ミチルさん!おひさしぶりです!!」
武蔵も満面の笑顔。
「ミチルさん、一人?」
リョウがミチルの後ろを気にするように見渡す。
「ええ。みんなを迎えに来たの。新しいゲッターロボが完成したのよ!」
ゲッターロボG
今までのゲッターロボのパワーをはるかにしのぐ強大なロボット。
月面戦争の教訓をもとに、すべての機能と武器を強化した。現在作り得る最強のロボット。その凄まじいパワーは、操るパイロットにも究極の技術と精神を求める。
早乙女研究所の前にそそり立つ巨大なロボット。
「うわぉ!!凄げぇ!!」
「ひゃああ!なんつぅーロボットだ!」
「信じられないな!!」
3人は呆気にとられながらも目をキラキラさせる。
「よし、さっそく乗ろうぜ!!」
「おう、早く分離させてくれ。おいら、3号機な!」
「ちょっと待てよ、武蔵。3号機はジャンケンだ!」
「誰も2号機を譲るとは言ってないぜ。」
からかうような声。
「おぅ、隼人!」
振り向くと、パイロットスーツの上に白衣を羽織った隼人が、口元にシニカルな笑みを浮かべて立っていた。
「ジャガー号でさえ扱いかねているお前たちに、こいつはちょっと渡せんな。」
「い、いや。そうは言うけどよ!」
「ジャガーを扱いかねてるっていうか、まぁ、そうだけど・・・・」
あたふたとする武蔵と弁慶。
「そう言うな、隼人君。今までのゲッターロボは、初めてだけにいろいろと難点もあったからな。ロボットの性能の劣る点は、すべてパイロットの技量任せだった。君達がいてくれて、本当に助かった。普通のパイロットだと半分以下の戦闘力しか出せなかっただろう。君たちだからこそ、100パーセント以上の力を引き出してくれた。」
隼人の隣に立つ早乙女博士が穏やかな笑みを見せながら言う。
「い、いやぁ、博士。そこまで言ってもらうと・・・・」
でかい体でもじもじする弁慶。
「博士、任せてください。おいら、どんなロボットだって見事に乗りこなしますから!!」
感動で目をうるうるさせている武蔵。
「だったら訓練でネを上げてんじゃねぇ!」
当然のことに叱咤するリョウ。
「このゲッターロボGは、これまでのノウハウを生かして戦闘ロボットとしての性能もさることながら、コックピットにおける重Gのパイロットの耐性も重視した。いずれ何体か製造される予定だし、そうすると自衛隊とかのパイロットもかなり必要だからな。そいつらが重Gに耐えかねて気絶するようじゃ困るから、加えて自動操縦でも合体の精度は高い。武蔵、弁慶、お前たちの腕が自動操縦以下ならクビだぜ?」
楽しそうに言う隼人。
「なんだって!!バカにすんな!」
「見せてやろうじゃないか、俺達の腕!!」
真っ赤になってドスドスとゲッターに向かう二人。
「もう、隼人君ったら。」
眉を顰めるミチル。
しらっと二人に続く隼人。リョウも走って行く。
「まぁ、ミチル。隼人君も久しぶりに彼らに会えて嬉しいんだろう。ここしばらく政府との折衝や会議、学会の出席要請など、雑務が多くて飛びまわっていたからな。彼はああ見えて本質は戦士だ。ゲッターロボを早く動かせたくてはしゃいでいるのだろう。」
「それはそうだけど、お父様。今おっしゃったお仕事は、本来はお父様の仕事ではなくて?」
軽く睨むミチルに、
「!あっ。いや、隼人君は何でも上手くこなすし、わしはああいうのが苦手だから・・・・何よりゲッターロボの開発が大事だし・・・・・・まぁ、彼には少し悪いとは思っているんだが・・・・・・・さぁ!わしらもあっちに行くぞ!!」
わたわたとゲッターに向かう早乙女。
「お父様!(怒)」
その夜。
久しぶりにみんなで取る夕食は楽しかった。
小さな元気も、めったに会えない父親に抱かれて嬉しそうだ。
「だけど、凄いモン作ったんだなあ!」
「おぅよ。あのパワー!腕がジンジン痺れたぜ。」
「さすが博士だ!あれがあれば、次にどんな敵が来ても楽勝だぜ。」
「ゲッターはいいが、パイロットの技量が今一だな。」
「何だとぉ、隼人!」
「別にお前だとは言ってないぜ、武蔵。」
「! このやろ!・・」
「ほらほら喧嘩しない。デザートをどうぞ。隼人君、いじわる言うもんじゃないわよ。」
ミチルがトレ―にケーキや珈琲を乗せてきた。
「みんな凄かったわ。フルパワーで合体したのは今日が初めてよ。いつもは力を30%に抑えるか、自動操縦で合体させるかどちらかだったもの。自動操縦だとどうしても50%でしかないし。」
「君達のように優れたパイロットを得たことは、わしにとって僥倖だ。これからも頼むよ。」
早乙女の言葉に感激して
「もちろんです、博士。おいら全身全霊で、地球の平和のために戦っていきます!」
「おぅおぅ、武蔵。言い切ったな。」
笑いながらリョウ。
「あったりまえだ!あんな凄いロボット、他のやつに渡せるもんか!猛特訓してやる!」
「俺がいること、忘れちゃ困るぜ。」
負けじと弁慶。
「いや、頼もしい限りだ。」
ゆったりとソファにくつろぐ早乙女。騒ぐ若者達を眺めながら思う。
月開発は、インベーダーという思いもしなかった恐ろしい敵に襲われ頓挫した。膨大な資材や資金、そしてなによりも多数の優秀な人材を失った。開発計画の再開は厳しい。
しかし人類の未来のためには、宇宙への進出は絶対だ。その第一歩となる月開発。
自分はコーウェン博士とスティンガー博士という仲間を得て月開発に臨み、そしてゲッター線エネルギーを得た。ゲッター線がどういうものであるのか、まだまだ未知数だ。だが自分は両博士や他の者たちと一緒にこのエネルギーを探求し続ける。おそらくそれが自分の存在理由ではないだろうか。今、目の前に居る若者達も、偶然と言うより何かに選ばれてここに居る気がする。必ず未来の地球を引っ張っていってくれるだろう。
『 しぃ 』
ミチルがこっそりとく人差し指を口に持っていく。
全員、そっと立ち上がる。武蔵は元気を抱っこする。そして静かに部屋を出た。
穏やかな寝息をたてている早乙女。
ミチルはそっと膝掛けを体にかける。昼夜問わず研究に没頭する父親の、眠りを妨げないように。
早乙女は夢を見る。
人類の未来の夢を。
ゲッターロボGの操縦訓練は、自衛隊の富士の訓練場ではなく早乙女研究所で行われた。まだまだ調整が必要であったし、データも取らなければならない。
リョウ達はここに来て知ったのだが、隼人はほとんど研究所にいない。早朝か夜なら顔を合すこともあるのだが。
「あいつ、いつもどこに行ってるんだ?」
不審そうなリョウに所員は。
「国内にいるときは、防衛省やエネルギー庁の会議とかで東京にいる時が多いですね。科学者の学会だと大抵海外です。ドイツやアメリカが多いかな。海外だと少なくとも3日はかかります。」
「しょっちゅう行ってるのか?」
「月の三分の二は出張です。おかげで研究所の仕事がなかなか回りません。データの確認とか次の指示とか。資材の購入の交渉もあるし、予算関係の書類も山のようです。なんで国って、こんなに書類好きなんでしょうね。」
事務の所員に聞いたせいか愚痴まで付いてくる。
呆気にとられたが、
「おいおい。データの確認とか指示って、早乙女博士がするんじゃねえのか?」
「早乙女博士はゲッターロボのことしかしません。」
いや、それって。
「そんなの、職員だって300人ほどいるだろ。係とか決まってんじゃねえのか?」
「責任者の考察が必要な書類多くて。」
いや、だから。
隼人って、責任者なんか?いつの間に?
「インベーダー戦が終わって、新しいゲッターロボの開発が始まったときから、早乙女博士が地下研究室に閉じこもってしまわれたんです。みんな本当に困ってしまって。」
インベーダー戦の事後報告に来ていた隼人が、所員たちのあまりの悲壮さに書類の山を片付けたら、早乙女がすっかり隼人に押し付けてしまったそうな。今では隼人の肩書が所長代理だと言う。
ゲッターロボの開発の手伝いをしているだけだと思ってた。富士での訓練は、自衛隊のやつらの教育だからつまらないのだろうと。まあ、俺達と違ってあいつには頭があるから、博士の手伝いをしててもいいさとは思っていたけど。
ちょっと付き合いが悪い、と面白くなかったのも本当だ。
「今回隼人さんはパリの学会です。パリに行くと、終わった後にパーティに誘われるようですね。社交界って、本の世界だと思っていました。」
「パーティだって?」
呆れてものが言えない。
「招待状が来るんですよ。隼人さん宛てにどっさり。帰って来てからもご婦人たちから手紙が来ますし。」
「手紙?」
「淑女はメールでは済ませません。ぼく、郵便の係もしてるのでよく見るんです。封蝋っていうですか、蝋に刻印したやつ。封筒も上等なものです。さすが、隼人さんだ。」
「・・・・・・・・・・・」
所員が立ち去った後も、リョウはしばらく動かなかった。なんか、悪いモンでも食ったような気分だ。
ふらふらと食堂に行くと、武蔵と弁慶がおやつを食べていた。(おやつだろう、時間的に。量は昼食並みだが、まだ午前10時だ。)
「おい、リョウ。どうしたんだ?顔色悪いぞ?」
心配そうに弁慶が尋ねてきた。
「悪ぃもん食ったか?」
口をもぐもぐさせながら武蔵も問う。
「・・・・・・ああ、なんか・・・・・・」
ドサッと椅子に腰を掛ける。
「なんかよ、消化不良起こしたみたいな気分だ・・・・・・」
「消化不良?」
信じられない!という顔で武蔵が聞き返す。消化出来ない食べ物って、この世にあるのか?おいら、なんでも消化するぞ?あ、そういえば前に、研究所所員全員が食中毒起こしたことあったな。リョウも隼人も腹壊して・・・・・ぷぷぷ・・・・
楽しい思い出を思い起こす武蔵v
「・・・・おい。」
ギロリと睨む竜馬。嫌な思い出を思い出したかv
「まぁまぁ、落ちつけよ。」
弁慶がコップに水を入れて差し出した。
「どうしたんだ、リョウ。」
「いや、なんかさ。隼人がパリでパーティに出てよ、ラブレターどっさり貰ってるって・・・・・」 (あれ、そうだっけ?曲解してない?笑)
「「「はぁああ!!!!?」」」
武蔵、弁慶、ミチルの声が揃った。
「あの隼人がパーティ?」
「ラブレターって、そんな、羨ましい!!」
「だから、またパリに行ったの?!」
ん?
なんかちょっとニュアンスの違うセリフなかった?
「隼人君、いつだって仕事ばっかりで!いくらお父様な代わりだからと言っても、すべての招待に応えなくていいっていつも言ってるのに!パリの学会だけは外さないと思ったら、そんな理由があったのね!もう!睡眠時間、何時間だと思ってるのかしら!」
「「「・・・・・・・・・」」」
ミチルの憤慨に、3人ともつい、引いてしまう。
「そ、そうだよな。せっかくミチルさんが隼人の健康を気にしてくれてるのにな。」
「うん。隼人に頼りすぎる所員達をいつも締めてくれてるもんな。」
「所員だけじゃなく博士達もだけど。ミチルさんに勝てる人はいないよ!」
お互いに「うん、うん。」と頷く3人。
「だいたい、学会なんて行く必要ないのよ!隼人君はゲッターチームのパイロットなんですからね!そりゃ、お父様が所長の仕事押し付けてるのが悪いけど。お父様だってそんなに学会に行っていたわけではないわ。それなのに、最近は招待ばかり。お父様宛てじゃなくて、隼人君宛てが増えてておかしいと思ってたのよ。」
プリプリ怒っている。
「そ、そうだ、ミチルさん!今日のランチは町に行きませんか?おしゃれなお店がオープンしたらしいですよ。」
武蔵が思い出したように言った。
「お、それはいいなぁ。行きましょうよ、ミチルさん!」
弁慶も話題を変えようとせっつく。
「おしゃれな店かぁ・・・・・・」
あまり興味ないリョウ。でも、まあいいか。
『ほんとうは今度の日曜日に予約取って、ミチルさんと二人で行こうと思ってたんだけどなあ・…』
ちょっと涙ぐむ、男・武蔵だった。
「おいしかったわぁ!スイーツも最高!!」
すっかり機嫌をなおしたミチルとともに、ゲッターチームが帰ってきた。
研究所に入ると何故かザワザワしている。いつもより人が多い。よく見ると、普段別の棟にいる所員や博士たちもいる。
「おい、どうしたんだ?」
リョウがちょうど近くにいた事務員に尋ねた。
「あ、リョウさん。淑女ですよ、淑女。パリの。すっごい美人です!」
「ええ!!」
「ほんとか?どこ、どこだ?」
「そんなに美人なのか?なんでここに!」
興奮する武蔵と弁慶。
「今、早乙女博士が所内を案内しています。隼人さんを訪ねていらしたそうですが、留守なので。」
「早乙女博士が地下から出てくるなんて、よっぽどだな。」
「敷島博士も挨拶されてましたよ。」
「敷島博士が?おい、怖がって気絶しちゃうじゃないか!」
「で、どんな美人なんだ?」
「色白で、って、フランスの人なら当たり前ですね。。背がすらっと高くて細くて、上品で綺麗な方ですよ。濃い茶色の長い髪、ストレートのさらさらで。」
うっとりしながら褒めたたえる。
「へえ、そんな美人なら早くお目にかかりたいな!」
「俺達も行こう!・・・って・・・ミチルさん。」
鬼のような形相のミチル。
「なんてこと!ここは日本政府の最重要研究施設なのよ!そんなアポイントメントも取らない不審者を、ほいほいと研究所に入れるなんて!何処にいるの!?」
「あ、すみません。えっと、多分今は所長室だと・・・・・・」
所員がミチルの様子におどおどと答える。
ツカツカと所長室に向かうミチル。
あわてて3人も続く。
「お父様!」
バン! とドアを開ける。
中にいた麗人が振り向く。
「ミチル!ノックをしなさい、失礼だろう!!」
早乙女の叱責にも答えずキリッと見つめる。
その人は。
楚々とした美人、水の精のような雰囲気を持っていた。
「うわぁ、びっじ〜〜ん!」
思わず声に出す武蔵。
ニコッとほほ笑むその姿に、つい、ピューと口笛が出る。
「お行儀がわるいぞ、リョウ。」
弁慶もどぎまぎしながら赤くなっている。
「ミチル、きちんと挨拶しなさい!隼人君のお姉さんだぞ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「「「ええ--------!!!!!!」」」
☆
「そんなことがあったんだよなあ。」
「あのときのミチルさんは怖かった。すぐに真っ赤になって謝ってたけど。」
「その姿は可愛かったv」
げへへと武蔵。
リョウ達とあっちの世界に行く山咲は、ケイ達の後見人を隼人の父親にお願いすると言った。そこから隼人の姉の明日香の話になり、
「すっげえ美人なんだぞ〜〜」と弁慶が言い出し、
「そういや、こんなことがあったなぁ。」
と、3人で盛り上がった。
「結局のところ、所員の社交パーティとやらは勘違いで、隼人はパリに行ったついでに明日香さんに会っていたんだってさ。」
「神重工業は明日香さんとその旦那さんが継いでいるんだけど、隼人は経営コンサルタントととして関わってたらしい。その他にも商品開発や取引先への折衝とかも頼まれてたそうな。」
「へえ、そうなんだ。あは、姉さん、ヤキモチ焼いたんだ!」
ケイが嬉しそうに笑う。
自分を犠牲にしてリョウ達を守ったミチル。その高潔な精神に感動よりも悲愴感を感じていたけれど。
そんな当たり前の女の子としての一面があったのが嬉しい。
「まあ、所員が言ったこともあながち勘違いじゃなかったみたいだけどな。」
「え?」
「パーティのお誘いが多かったのは本当だし、隼人も結構出席したようだから。」
「え、そうなの?」
「早乙女研究所の代表という立場からも、招待を断ってばかりもいかなくて。でも、一人で行くとご婦人たちに捕まるってんで、明日香さんをエスコートして参加していたらしいが。」
「そしたらミチルさんが、研究所のことで明日香さんに迷惑かけられないって、隼人の海外出張に付いていくようになったんだ。」
「お前も俺達とお留守番出来るようになったからな。」
優しそうな目でケイを見つめる弁慶。
「俺が思うに、あのころから急速に二人の仲が近づいたか?」
「いや、まだそこまでじゃなかっただろう。もう少しあと、ミチルさんが秘書として仕事し始めてからじゃねえか?」
「おうよ。あのころはまだおいらにも充分可能性はあったしな!」
(いや、ないない。)
残りのメンバーの心の声。
「デザイナーとしても有名な明日香さんが、何着もミチルさんにドレスをプレゼントして。」
「ミチルさんは恐縮するんだが、姉貴の道楽だから受け取ってやってくれって隼人が。」
「で、ふたり、対のデザインになってるんだよな〜〜〜。」
「ナントカっていうセレブ向けファッション誌にツーショットで、くそ〜〜〜!!!」
「おい、落ち着け、武蔵。」
あははと笑いあう楽しい時間。あれ、ちょっと冷気が?
うん?
あ?
全員固まる。この展開はヤバい。
「あら、私は気にしていませんわよ。」
最近、ようやく学習したゲッターチームがおそるおそる覗うその先には。
爽やかな笑顔の山咲。
「私はそのころまだ中学生ですもの。ええ、そのファッション誌は手に入れてましたけどね。」
パリの社交界のファッション誌を中学生が、というか、そこに隼人が載っていると知ってた?
・・・・・・・・ス○ーカー・・・・・
有能な人間は、幼いころから才を現すという。『栴檀は双葉より芳し』
意味もなく国語の勉強をするゲッター新旧チームだった。(現実逃避とも言うv)
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koro様 44500リクエスト。
お題は 「チェンゲで月面戦争後の早乙女研究所。隼人を尋ねてきた美人。
おもしろくないミチル。でも、それは明日香姉さまv 」
少女マンガ的な小説を、とのことでしたが、
もうしわけありませ〜〜〜ん。お待たせした揚句、こんなものになってしまいました〜〜〜〜
いつも私の小説を楽しんで下さるというkoro様に、感謝をこめて書きあげるつもりでしたのに、
あいかわらずのかるらです。
精進しますので(こればっか・汗)、またよろしくお願いします!
( 2014.3.30 かるら)